"娘を押し付けた夫、九年目の誤算" 第31話
夫は何も言い返せなかった。
ただ、みのある封筒を、絶望な差しで見つめているだけだった。
「週末には、莉子に会いに来ます。お義母様にも、送迎をお願いすることになります。よろしいですね」
「……ああ」
夫は力なく頷くしかなかった。
を過ぎた頃、義母はちがった。
玄関で靴を履きながら、義母は振り返ることなく言った。
「……今は帰るわ。を、やすわ」
それだけを言い残し、い取りでってった。
卓のには、枚のカラー写真と戸籍謄本が、そのまま残されていた。夫も私も、それを片付けようとはしなかった。
、公平が部活から帰宅した。
半、が練習試を終えて帰宅した。
私はをリビングへ呼んだ。夫はソファに座ったまま、源の入っていないテレビの黒い画面を見つめていた。
「にお話しがあります」
私は夫ので、静かに切りした。
「お父さんと、婚することに決めました。詳しい理由は、でにすべて話します。今、聞きたいのはつだけ。……は、これからどうしたい?」
は私を見つめ、それからソファの夫を瞥した。
「お母さんとく」
迷う素振りなど微もなかった。最初からに決めていたような、揺るぎない声だった。
公平も即座に続けた。
「俺も、母さんとく」
夫がソファからを乗りした。
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「おら……何を勝なことを……!」
「父さんが、駅のモールの駐で女のとに乗って笑ってるの、俺、この目で見たから」
のい声が、夫の言葉を遮った。
「だ。母さんには次のに話した。父さんには言わなかったよ、母さんが『今はまだ言うな』って止めたからな」
公平もややかな目を向けた。
「あの夜、に掛かってきた話……『莉子ちゃん元気?』って聞いてきた女の、その倫相だろ? ……父さん、最だよ」
夫は完全に息の根を止められたように、を閉ざした。
「……莉子は?」
公平が、そうな表で私を見つめてきた。
「莉子はどうなるの?」
「莉子は、このに残ります。お父さんが育てて、おばあちゃんが伝います。私は、毎週末に莉子と会います」
が眉をひそめた。
「……なんでだよ」
「それも、で階で話します」
階のの部で、私はの息子に向かって、すべての真実を包み隠さず打ちけた。
の野島マキからの妊娠の話。
の玄関先にっていた歳の莉子。
「ゆきの親戚の子だと言ってくれ」とをげた父親の欺瞞。
養子縁組を度も拒絶され、私と莉子のには法な親子関係がしないこと。
そして、今から養子縁組をすれば、莉子が「婚のついでに捨てられた子」になってしまうこと。
の息子は、私の話を途で遮ることなく、静かにを傾けていた。
「……莉子は、ってんの?」
公平が掠れた声で尋ねた。
「らないわ。んでくれたお母さんが別にいることはっているけれど、お父さんが実の父親だということはらない」
「……母さん、莉子には言うの?」
「言わないわ。あの子が自分から『りたい』と言いすそのまで、絶対に言わない」
が膝ので組んでいた拳を解き、静かに息を吐いた。
「母さん……莉子には、何の罪もないよな」
「ええ、分かってる。何つ、あの子の責任じゃないわ」
「俺が言いたいのは、それだけだ」
はそれ以、何も言わなかった。
公平がその横で、力く頷いた。
「俺もいるし。莉子には、俺たち兄貴がいる。週末だけじゃなくて、学の帰りとかにも様子見にけるしな」
私はの息子ので、ただく頷いた。声をせば、涙が決壊してしまいそうだった。
、咲ちゃんのお母さんのが、莉子を送り届けてくれた。
玄関で靴を脱いだ莉子は、リビングの張り詰めた空気の異変を、敏に察していた。卓のの類はすでに封筒にしまわれていたが、のを漂う空気は、朝かけたとは決定に異なっていた。
夕飯を終えた、私は階の莉子の部へと向かった。
莉子はベッドの端に腰掛け、膝ので指をいじっていた。私はその隣に静かに座った。
「莉子。……お父さんと、婚することになったの」
莉子の肩が、ビクッとねた。
「お兄ちゃんと公平お兄ちゃんは、お母さんと緒に、別のしいアパートへ引っ越すことになったわ」