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"娘を押し付けた夫、九年目の誤算" 第23話

「おい、そろそろ腹を決めろよ」

夫は流し台に腰を預け、腕を組んで見ろしてきた。

「何の話ですか?」

「てくのかどうかだよ。母さんももう限界だって言ってるぞ。おがのの空気を悪くしてるんだってな」

「……お義母さんに、何と仰ったのですか?」

「事実を言ったまでだよ。おが莉子を遇してがらないから、庭内がギクシャクしてるってな」

私は濡れたを拭き、夫の顔を真正面から見据えた。

「私がてくなら、どうされるおつもりですか?」

「とも連れてけよ。俺はもう、分も稼ぐ義理はないからな」

分稼ぐ。かつては族を養う誇りとしてにしていたその癖を、夫はいま、の子供をまとめて捨てるための免罪符として使っていた。

「……莉子も連れてけ、と?」

「当たりだろ」

夫はで笑った。

「あの子の母親役をやってきたのは、おだけだろ。おがあの子を置いていけるわけがない。だったら、責任持って連れてけよ」

りというが、極限まで達した、これほどまでにたく、静まり返るものだということを、私はこの夜初めてった。

この男は、昼の親戚のでは自分の娘を「拾ってきた子」と蔑み、いま、夜の台所では「おしか母親がいない」と言い放つ。

私が莉子を見捨てられないというみを完全に計算し、自分自の勝な逃げとして利用しているのだ。

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「……分かりました」

私は静かに告げた。

「いうちに、正式にお話しします。お義母様にも同席していただいたで」

「母さんもか? ……まあ、好きにしろよ。おがてってくれるなら、母さんだってんで万々歳だろうからな」

夫は交じりに台所をてった。

の夜。、曜。

計の針が付変更線を越えようとしていた。

寝からは、夫の規則正しいいびきが聞こえていた。

枕元の充器には、あのスマートフォンが接続されていた。呂には持ち込むくせに、就寝には無防備に枕元に放置する。昔からの変わらない悪癖だった。

私は息を殺して寝へ忍び込み、充ケーブルを静かに抜いて端末を回収した。

リビングへり、卓の子に座った。部のかりはつけず、元のさなブックライトだけを灯した。

暗証番号の入力画面。

私は迷わず、男・の誕である桁の数字をタップした。

カチリ、と画面のロックが解除された。

自分の貞を隠すための具に、裏切り続けている最の息子の誕を設定している。その浅ましさに、りを通り越してただ呆れ果てるばかりだった。

緑のメッセージアプリをくと、番に『マキ』という名が表示されていた。

私はトーク履歴を番古い箇所までスクロールし、最初からすべてを読みめた。

記録は、のから始まっていた。

『駅で偶然会えたの、びっくりしたけど本当に嬉しかった!』

『俺もだよ。マキ、全然変わってないな』

には連絡が毎の課になり、には「く会いたい」という言葉が並んでいた。

そしてがけた。野島マキから具体な銭の求が始まっていた。

『派遣の契約更、厳しくてさ。賃払うのキツイんだよね』

『いくらりないんだ?』

『万』

『万なら、毎面して振り込める』

から毎万円。

あのゴミ箱に捨てられていた万円の細のうち、万円のき先がこれだったのだ。

そしてから活費を万円減額しようとしていたのも、すべてこの倫相への資援助の穴埋めだった。

には『今分、振り込まれてた! 助かるー!』というメッセージ。

には『莉子の誕、今だっけ? すっかり忘れてたわ(笑)』という実の母親からの信じがたい送信。夫からの返信はなかった。

その週、『のホテル、楽しかったね! あそこ、また連れてって!』。スーツの内ポケットにあった領収の付と完全に致していた。

そして、の夜。私が卓で目にした、あののメッセージののやり取りがすべて現れた。

『今度こそ、緒になれるよね? 子供たちはゆきさんに任せればいいじゃん』

『任せる。ゆきならとも引き取るだろう。あいつは莉子を絶対に置いていけないからな』

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