"娘を押し付けた夫、九年目の誤算" 第20話
その話からの曜、。
朝に夫がかけてった直、部活のジャージを着た男のが、スポーツバッグを肩にかけたまま台所に入ってきた。
「母さん、ちょっといいか」
はそう言うと、台所とリビングを隔てる引き戸を、音をてずにピタリと閉めた。
こので、台所の戸をわざわざ閉めて話をするなど、これまでにもいなかった。
「昨、部活の帰りに駅のモールに寄ったんだ。友達と」
「ええ」
「モールの体駐で……父さんを見た」
私は洗っていた皿を止め、泡だらけのを止めた。
「女のと緒だった。父さんのの助席にその女が乗ってて……で笑いってた」
の声は、恐ろしいほど平坦だった。っているようにも、泣いているようにも聞こえなかった。ただ、肩に掛けたスポーツバッグのストラップを握りしめる指先の関節が、くなるほどく軋んでいた。
「……俺さ、見なかったことにしようとったんだよ。でも、昨の夜、台所にってる母さんの顔見てたら……無理だった」
「……話してくれて、ありがとう」
は私の目をじっと見つめてきた。
「母さん……ってんの?」
「……ってるわ」
はく息を吐きした。
「ってて……ずっと黙ってんのか?」
「黙ったままで終わらせるつもりはないわ。ちゃんと、すべてを終わらせるための形を、今作っているところなの」
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「俺、父さんに直接聞いてやろうか?」
「絶対に聞かないで。今はまだ、そのじゃないの」
は唇を真文字に結び、にろしかけていたバッグを持ち直した。
「……分かった」
は引き戸にをかけ、振り返った。
「母さん、もうすんなよ。俺や公平のこと、する理由にしなくていいから」
私は返事ができなかった。
は私の答えを待たずに、玄関へと歩きっていった。
カチャリと玄関のドアが閉まる音を聞きながら、私は泡を洗い流すことも忘れてち尽くしていた。
は悪くない。浮気の現を目撃してしまったことも、それを母親に告げるために晩で苦しんだことも。
悪いのは、歳のな息子にそんな現を目撃させ、庭ので息を潜めさせた父親の方だ。
そしてが最に残した、「俺たちのことを理由にするな」という言葉。
、私がすべてをみ込んで耐え忍んだ理由は、幼かった息子を守るためだった。その息子が成し、今、「自分たちを言い訳にして耐えるな」と私に告げたのだ。
私は台所の計簿をき、震えるでき込んだ。
『。から「しなくていい」と言われた』
その夜、帰宅した夫が居でテレビを見ながら言った。
「来週の曜は、親父の回忌だ。母さんので昼飯をうから、仕しの弁当を頼んでおけ。
フミ叔母さんも来るからな」
「はい。お寺でのご法はどうされますか?」
「うちは施主側だろ。母さんが仕切るんだから、おは言われた通りに伝いだけしてればいいんだよ」
義父がくなって。
私は翌、仕しに話をかけ、義母、フミ叔母、夫、私、、公平、そして莉子の分をわせ、の料理を注文した。
莉子のは、私が識して数に入れなければ、このではあっというに勘定からされてしまう。、ずっとそうだった。
、曜。半。
私は再び、駅の向井法律事務所の子に座っていた。
机のには、この週で集めた資料を然と並べた。
・夫のスーツの内ポケットにあった、のホテル領収の写真枚。
・の夜、夫のスマホに届いたメッセージをき写したメモ。
・、、、、の夫と義母の言の記録。
・分の計簿と、莉子の支を記録した専用ノート。
向井弁護士は類を枚ずつ丁寧に確認していった。
「、宿泊名。ご主はこの、棚卸しの休勤だと主張されている。そして、ご自宅の話に女性から連絡があり、莉子ちゃんの名をにした……状況証拠としては、極めて固なものが揃いつつありますね」
向井弁護士はペンを置き、私を真っ直ぐに見据えた。
「メッセージの現物の画面写真があれば、貞の証拠としては決定になります。