"娘を押し付けた夫、九年目の誤算" 第16話
『配偶者の子』という、第者にいにとどまっています。もしご主と婚が成した、ゆきさんと莉子ちゃんの法な関係は、その瞬に完全に消滅します」
私は背筋をピンと伸ばし、拳を膝ので握りしめた。
「法律、ゆきさんが莉子ちゃんをご自宅から連れして引き取る根拠は、切しないのです。親権も、々の監護養育権も、法には実父であるご主に帰属しています」
分かっていたことだった。
では痛いほど理解していたはずの酷な現実を、第者である専のからはっきりと言葉にされた瞬、胸の奥を鋭利な刃物で抉られたような痛みがった。
の歳をかけて注いできたのすべてが、「法な根拠がない」というたい言のに無力化されていく。
「……もし、今から私が莉子と養子縁組をすることは能でしょうか?」
「莉子ちゃんは、ご主の婚姻関係でまれたお子さんです。この、ゆきさん単独での養子縁組は受理されず、ご主との共同縁組という形をとる必があります。さらに、莉子ちゃんは歳未満ですから、法定代理である親権者――つまりご主の法な承諾が絶対に必となります。つまり、ご主が拒絶した点で、ゆきさん単独で続きをめることは法に能なのです」
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「……夫は、面倒だからと言いました。も、も」
「ご主は、その言葉の法なを理解したで拒絶していたのだといますか?」
「理解していたのだといます。面倒だったのは続きのではなく……私が莉子の法な親になることそのものだったのだといます」
向井弁護士はその言葉をノートにはき留めず、ただ静かに私の目を見つめ返してきた。
「息子さんおについては、ご両親の婚に際して親権をどちらにするか話しうことになりますが、歳と歳というご齢であれば、庭裁判所でもご本たちのが最優先されます。ゆきさんが親権について過度に配される必は、まずありません」
「はい」
「本当に配されるべきは、莉子ちゃんの方です。ゆきさんがこのをていくと決断された、莉子ちゃんには何が残るのか……」
配偶者の子。
私にとって、莉子はにわたって命がけで育ててきた最の娘だった。
だが、法律という徹なシステムは、あの子のことをただ「夫がで作った子供」としか定義しない。
私が毎朝作ってきた弁当の数も、夜に病した涙も、計簿の隅に刻み続けたの記録も、法律は切カウントしてくれない。
法律が数えるのは、役所の戸籍という名の切れ枚にかれた文字だけなのだ。
そしてそののに、私の名はどこにもしない。
私はバッグのから、冊の古い学ノートを取りした。
の結婚活のうち、莉子の収支欄を特別に設けて記録し続けてきた、分の計簿だった。表のは経劣化で褪せ、角は擦り切れていた。
向井弁護士はそれを受け取り、最初のページをゆっくりとめくった。
の。おむつ、ミルク、赤い子供靴、児科の初診料……。
事務所のに、乾いたをめくる音だけがサラサラと響き続けた。
「……これは、法な銭請求の直接な証拠にはなりません」
向井弁護士は計簿を静かに閉じ、両で私の方へと押し戻した。
「ですが、ゆきさんがこの、どれほどの覚悟とを持って莉子ちゃんを育ててこられたのかという、かぬ真実の記録です。いつか、この記録を誰かに見せなければならないが来るかもしれません。そのまで、切に元に保管しておいてください」
「誰かに……ですか?」
「それは、ゆきさんご自が決めることです」
向井弁護士は帳をき、今の指示を端に伝えてくれた。
「これからは、ご主がいつ、何を言ったのか、その付と具体な発言内容をメモとして克に残してください。それだけで、調や裁判における極めて力な陳述のになります」
「はい」
「それから、もうつだけ」
向井弁護士は机ので両を組み、真剣な差しを向けた。
「私は、ゆきさんの方としてお話を伺っています。