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"娘を押し付けた夫、九年目の誤算" 第15話

名刺を差しされ、私は自分がまれてこの方、度も自分の名刺を持ったことがないという事実に改めて気づかされた。

「瀬ゆきと申します。杉本さんのご紹介で伺いました」

「向井です。どうぞ、こちらにお掛けになってください」

私はパイプ子に腰をろし、の来事から、順を追ってすべてを話し始めた。

のにかかってきた、野島マキからの妊娠ヶの話。

夫の座と涙。義母の「男の遊び」という揉み消し。

そののにまれた女児と、夫による認。

の、玄関先に赤い靴を脱ぎ捨ててっていた歳の莉子。

「ゆきの親戚の子として育ててくれ」とをげた夫。

養子縁組を度にわたって「面倒だ」と拒絶されたこと。

そしての夜、卓ので青くった夫のスマートフォンの通と、カタカナの「マキ」という名。

活費を突如万円減額すると言いしたこと。

義母から浴びせられた「あんたの親戚に引き取らせなさい」という罵声。

向井弁護士は、私が話している、ただの度もを挟むことはなかった。元の学ノートに、黒い万で付と点だけを淡々とき留めていった。

私がすべてを話し終えるまでに、分のが流れていた。

「……まず、ご主と野島さんとの貞関係についてですが」

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向井弁護士はノートから顔をげ、静かにをいた。

「貞為に基づく慰謝料は、ご主と貞相の双方に対して請求が能です。相方が、ご主に配偶者がいることをっていたことが法な提となりますが、ゆきさんのお話によれば、に相の女性からご自宅へ直接話がかかってきているのですね」

「はい。『瀬秀さんの奥様ですか』と名指しで言われました」

「それであれば、相方が既婚者であることをらなかったという言い逃れは法に通用しません。ただし、現形で関係が続いていることについての客観な証拠が必です。メッセージの文面、付、宿泊や旅の記録、そういったかぬ証拠ですね」

「分かりました」

「それから、活費を万円減額するというお話ですが」

向井弁護士はノートに記された付のつを指先でトントンと叩いた。

「ご主の収入が本当に減したのかどうかは、会社が発する源泉徴収票や与細を取り寄せればすぐにらかになります。もし虚偽であるならば、浮いたそのおがどこへ流れているのかも、いずれ調査の対象になります。……ただし、現点ではまだ、ご主に対して決してその件を問い詰めたり、騒ぎてたりしないでください」

「言いません」

「ええ。今ご主を問い詰めれば、相は証拠を隠滅する側に回るだけです。

今はご主が『妻は何も気づいていない』と油断している状態を維持する方が、ゆきさん側にとっては圧倒に利に働きます」

私はその言葉を聞き、初めて「夫の油断」というものを客観に捉えることができた。

夫は、私が何もらない愚鈍な妻だからこそ黙って従っているのだと信じ込んでいる。そのい込みと油断こそが、これからの私にとって最の武器になるのだ。

「貞の慰謝料の相は、婚姻期や子供の無、貞の期などを総に考慮して、百万円から〇万円ので決着することが般です。……それから、これはな点ですが、つの貞為に対する慰謝料の総額というものは基本につであり、それをご主と相方のが共同で負担する性質のものです。双方から満額を取りできるわけではないということは、あらかじめご理解ください」

「はい、承しています」

「……そして、番の問題である莉子ちゃんのことです」

向井弁護士はそこで言葉を切り、慎に言葉を選ぶようにして私の瞳を見つめた。

「ゆきさんは、莉子ちゃんと法な養子縁組をされていない。この点に違いはありませんね?」

「はい。夫がで役所へき、認と入籍の続きだけを済ませました。私自は、何の続きの類にも署名も押印もしていません」

「そうなりますと、現の民法、ゆきさんは莉子ちゃんの法な親ではありません。

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