"娘を押し付けた夫、九年目の誤算" 第11話
私が耐え、目を背け、庭を守るためにみ込んだ結果が、この歳の無力な子供の姿となって、目のにっていたのだ。それが莉子だった。
莉子を寝かしつけた、夫は暗い台所で再び私のにをげた。
「母さんにも、や公平にも、おの側のい親戚の子を引き取ったことにしてくれ。頼む。本当のことを言えば、あの子はこのので『倫の子』としてい目で見られることになる」
私は静かに頷いた。
「引き取って育てるなら、正式に私と莉子で養子縁組をしましょう。私が責任を持って、この子の親になります」
だが、夫はあからさまに面倒そうな顔をして首を振った。
「いや、今はそんな形式なことはいい。切れ枚なんて関係ないだろ。族として暮らせば同じなんだからさ」
夫はそう言って、方に話を打ち切った。
その、夫は野島マキと面で協議し、親権者を自分に変更する続きをめた。そして莉子を瀬の姓にし、自分の戸籍へと入籍させた。
私はその連の法続きに、ただの度もち会わせてもらえなかった。夫が役所の窓で何をどう届けたのか、らされることすらなかった。
そして、莉子が学に入学する。私はもう度、夫に養子縁組の届を提案した。
「今更そんな面倒なこと、しなくていいだろ。
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莉子はもう、うちの子供として活してるんだ。をしたところで何が変わるっていうんだよ」
夫はそう言ってテレビのチャンネルを変えた。それ以来、私は度と養子縁組の話題をにしなくなった。
浴から聞こえていたシャワーの音が、ピタリと止まった。
私はスマートフォンの画面に切触れないまま、卓の子にく腰をろし直した。画面のバックライトはすでに消え、暗と同化していた。端末は夫が置いたとまったく同じ角度、同じ位置を保っていた。
脱所の引き戸がき、タオルで濡れた髪を拭きながら夫がてきた。
夫は何気ないつきで卓のスマートフォンを拾いげ、画面を瞥した。何も言わなかった。
「も棚卸しだから、朝からるぞ」
夫はそう言い残し、スマートフォンを片に階の寝へとがっていった。
「……はい」
私は背に向かって、くそう答えた。
界が真っ暗になる、という慣用句がある。だが、そのの私の境はまったく違っていた。
台所の無質な蛍灯のので、私の識は驚くほど徹に、澄み渡るように静まり返っていた。
、「もう度と会わない」という夫の言葉を信じて、私はあの子をこのに迎え入れた。
その同じ女が、いま再び夫に対してメッセージを送ってきている。
『子供たちはゆきさんに任せればいいじゃん』
子供たち、と複数形でかれていた。ではない。だ。
あの女は、自分が産み落としておきながら歳で捨てた実の娘すらも、当然のように私に押し付け、夫とで逃げろうとしているのだ。
私は、今度は絶対に許さない。
だが、と同じようにに任せて問い詰め、夫の嘘の涙でうやむやに終わらせるつもりは毛なかった。
今度こそ、すべてを完全に終わらせるのは、私自だ。
その夜、私は計簿の莉子の欄をいた。分の細かな数字が、幾にも連なって並んでいた。
階では、夫が何もらずにいびきをかいて眠っていた。
曜、夫は宣言通り、朝くからでかけてった。
私はを連れて、駅の型スポーツ用品へと向かった。
がワゴンセールの最もい棚からのシューズを慮がちに選んだ、私は何も言わず、その靴を棚に戻し、最段に並んでいた名メーカーの首を保護する最モデルをに取った。
「母さん、これすぎるよ」
「いいのよ。を痛めて病院に通うことになるより、ずっとい買い物だわ」
はそれ以、何も言わなかった。
買い物を終え、自転で並んでる帰り。が私の背に向かって、ぽつりと尋ねてきた。
「……父さん、今も仕事なの?」
「……そうみたいね」
私がそれだけを答えると、は「ふーん」とだけく呟いた。そのい相槌のに、どれほどの疑と諦めが含まれていたのか、私には痛いほど伝わってきたが、あえて聞き返すことはしなかった。