"古希の夜、二人の嫁は手を引いた" 第4話
お義姉さんもそれを承して、階をけ渡す準備をめているんだって」
私は息を呑んだ。
「……私が? そんなこと、度だってにしたことはないわ」
「そうですよね」
織は自嘲するように元を歪めた。
「良太の言うことなんて、最初から嘘ばかりでした。でも、私は信じてしまっていたんです。お義姉さんがたいで、私たちを厄介者扱いしているから、せめて私が介護を引き受けて恩を返さなきゃいけないんだって」
織はスマホを操作し、テーブルのに滑らせてきた。 画面には、良太から送られてきた量のLINEメッセージが並んでいた。
『母さんがを譲ってくれるって言ってるんだから、おが面倒見るのは当然だろ』 『パートのシフト増やしてるかよ。族の介護のほうが優先順位いだろ』 『おは事と育児しか取り柄がないんだから、母さんの世話くらい完璧にやれよ』 『兄貴の嫁さんはキャリア志向で気位がいから、のお世話なんて絶対やらないぞ。おがやるしかないんだよ』
吐き気がした。
良太の甘えと狡猾さ。 そして、自分の妻を「都のいい無料の介護員」として母親に差しすことで、自らは切のを汚さずに私のを奪しようとしていた浅ましさ。
「織さん、これ……」
「の、私の母が胃の術をしたんです」
織の瞳に、静かなりのが宿った。
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「週だけでいいから、子供の送り迎えを伝ってほしいと良太に頼みました。でもあいつは『仕事が忙しい』『男がそんなことで休を取れるか』って断ったんです。それなのに、その翌、お義母さんが膝を痛めたには、私にパートを休ませて朝から病院へ付き添わせました」
「……」
「そのに、はっきりと理解したんです。このにとって、私のも、私のも、自分の族を気持ちよく回すための消耗品でしかないんだって」
織はコーヒーカップを両で包み込んだ。 細い指先が、微かに震えている。
「今の古希の席で、お義母さんが悪気のない笑顔で私の仕事を辞めさせようとした、の底からいました。ああ、このから逃げなければ、私は、誰かの都の良い具として使い潰されるんだって」
私は何も言えず、めかけた茶のカップを見つめた。
織が戦っていたのは、私ではなかった。 義母が作りげ、夫たちが甘受してきた「嫁がすべてを負担するのが当たり」という、分く歪んだ庭の構造そのものだった。
「織さんは」
私はゆっくりと顔をげた。
「本当は、どうきたいの?」
織は驚いたように目を見張った。 そんな質問を投げかけられること自体が、何ぶりか分からないといった表だった。
「……私、美容師の仕事が好きなんです」
ぽつりぽつりと、彼女の唇から言葉が零れ落ちる。
「今は扶養の範囲内で、パートとして細々と続けていますけど。本当はもっと技術を磨いて、いつかブライダルやヘアメイクの現にも復帰したい。子供たちを自分ので育てげて、自分のでちたいんです」
「なら、その調、絶対に引きげちゃダメよ」
私が即座に告げると、織はさく息を呑んだ。
「方になってくれるの……ですか?」
「方というか、当然の権利を守っているだけよ。のを勝に奪おうとする男も、のを勝に買い叩こうとする義母も、どちらも突っぱねて当然だわ」
私はテーブルを挟んで、織のスマホを指さした。
「そのLINEの履歴、全部バックアップを取っておきなさい。調で必ずあなたの武器になるから」
織の瞳から、粒の涙がぽろぽろと零れ落ちた。 料亭の座敷では決して見せなかった涙だった。 彼女は何度もペーパーナプキンで目元を押さえながら、さく頷いた。
「ありがとうございます……お義姉さん」
「お義姉さん、はもうすぐ終わりかもしれないけれど」
私はしだけ元を緩めた。
「連絡先、交換しておきましょう。あっちの男たちが何を仕掛けてくるか分からないから」
私たちは夜のファミレスでLINEを交換し、それぞれのについた。 共闘と呼ぶほど甘いものではない。
けれど、互いを牽制しう敵ではないことだけは、確かな応えとして胸に残った。