"百万円を積まれても、他人に戻る" 第17話
「……来たのね」
「ええ。『私は跡取りの男児の祖母だ、孫の顔を見る権利がある、嫁が勝に面会を拒否するなんて許されない』って喚き散らして。でも、師さんが配した警備員に両脇を固められて、ロビーから叩きされてた。周囲の来患者全員に見世物みたいに見られて、真っ赤な顔して逃げていったらしいわ」
世体を何よりもんじる老婆が、病院のロビーで審者として排除されたのだ。 自業自得だった。
「これ、田先から預かってきた公正証の最終ドラフトよ」
理がレターパックから取りした類を、ベッドのサイドテーブルに置いた。
『婚付等契約公正証嘱託』。
親権はとも完全に私が持つこと。 算定表限に基づく額養育費の支払い義務。 婚姻費用の未払い分および慰謝料の分割支払条項。 制執認諾文言――支払いがヶでも滞れば、即座に夫の与と座を差し押さえる法拘束力。
「弘さん、もう事務所でこれに署名・押印したって」
理が言った。
「田先が言ってたわ。『ご主は切の異議を申してず、震えるでサインされました』って」
私は類をに取り、夫の署名と実印のを見つめた。 胸のに来したのは、勝利の美酒ではなく、研ぎ澄まされた徹な平穏だった。
この枚で、の欺瞞と呪縛が、完全に断ち切られる。
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、経過が定したため、私は病院内の面談をに使用する許を得た。
そこに、義母を呼びしていた。 これが、直接顔をわせる最の会だった。
面談の扉がき、義母が入ってきた。 数までの派な装いは見るもなく、な黒のアンサンブルにを包み、背はさく丸まっていた。
席に着くなり、義母は両をテーブルのでね、すがるような線を私に向けてきた。
「美咲さん……、読んでくれたかしら」
義母の声は、掠れて震えていた。 今朝、母を通じて病に届いた通の封筒。 そこには『男の子だとっていたら、あんなことは言わなかった。どうか許してほしい、本に戻ってきてほしい』と綴られていた。
「読みましたよ」
私はを取りし、テーブルの央に置いた。
「お義母さん、これ、受け取れません」
「ど、どうして……! 私はから謝っているのよ! あのは気が転していて……でも、男の子がも産まれたのよ? 藤原の未来が繋がったのよ! 私が悪かったわ、これからは美咲さんを事にするし、の実権も全部あなたに譲るから――」
「男の子だったから、謝っているんですよね?」
私のい言が、義母の言葉を凍りつかせた。
義母の目が、見かれる。
「もし、あの産まれたのが、の女の子だったら?」
私は逃げを塞ぐように、たく問いかけた。
「あなたは今、この部に来てをげていましたか? 『男を産めない来損ない』と私を罵倒し、赤のの相親写真を振りかざして、追いしたままでしたよね」
「そ、それは……」
「男の子だから許す。女の子だから見す。あなたのその歪みきった価値観そのものが、私と子供たちに対する最の暴力なんです」
義母は言葉を失い、喉を鳴らした。
「私を平打ちしたこと。流産した過を『欠陥品』と嘲笑ったこと。そして何より、葵と結を、『跡取りじゃないから価値がない』と傷つけ続けてきたこと。その罪のさを、あなたは秒たりとも理解していない」
「美咲さん……お願いよ……」
義母の目から、ボロボロと涙がこぼれ落ちた。 かつての尊さは消え失せ、そこには自分の信じてきた世界を全否定された、れな老の残骸があるだけだった。
「孫に……孫に会わせて頂戴……抱かせて……」
「お断りします」
私は切の躊躇なく、宣告した。
「私の子供たちに、あなたを祖母と呼ぶはいません。とも、私の籍に入れます。藤原の姓は名乗らせません」
「そ、そんな殺な……! 血が繋がっているのよ!?」
「血の繋がりを盾にして、命を選別したがにする言葉ではありません」
私はちがった。 テーブルののを、義母のへ押し戻す。
「度と、私たちに関わらないでください」
背を向け、面談のドアノブにをかけた。
「美咲さん!!」
背からがる鳴のような呼び声を、私は度も振り返ることなく置きりにした。