みかん小説
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"百万円を積まれても、他人に戻る" 第8話

ふう、と息を吐いた瞬、腹の奥でつの命が激しくねた。まるで、『お母さん、よくやったね』と声をかけてくるかのように。

お腹に両を当てる。温かい。この子たちは、私の腹ので、確かにきている。

誰かのの継ぎにするためじゃない。誰かの社の子を守るための具でもない。ただ、この世界にまれ落ち、自分のできていくための命だ。

その、ポケットのでスマートフォンが激しく振した。

画面を見る。夫からだった。

田弁護士から発送された『婚姻費用分担請求』の内容証郵便が、自宅へ届いたのだ。

通話ボタンを押す気はない。すぐにメッセージが崩のように送り込まれてきた。

『内容証ってどういうことだ!?』『弁護士なんててて、事にするなと言っただろうが!』『会社にられたらどうするんだ! 俺のを考えろ!』

画面をスクロールしながら、私の元にたい笑みが浮かぶ。

どこまでも、自分のことだけ。妻と子が飢えるかもしれないことには像すら及ばず、突きつけられた法な刃に怯え、自分の体面と会社のだけを気にしている。

私はく返信を打った。

『法な請求です。今のやり取りはすべて田弁護士を通してください。子供たちの父親として話があるなら、弁護士のち会いのもとで聞きます』

送信ボタンを押すと、即座に既読がついた。

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数分、震えるような文面が返ってきた。

『頼む、美咲。度だけ会ってくれ。子供たちにも会いたい。これ以、母さんを刺激したくないんだ』

まだ義母の顔を伺っている。どこまでっても、この男は母親の操り形のままだ。

私は田弁護士に連絡を取り、夫との面会を取り付けることにした。所は、駅の喫茶。第者の目があり、密にならない所。

曜の午。母に結を預け、私は葵だけを連れて駅へ向かった。葵がどうしても『お父さんに聞きたいことがある』と言い張ったからだ。

喫茶の窓際の席に、夫はすでに座っていた。以着ていた仕てのいいシャツの襟元はしヨレており、目のには濃い隈が浮かんでいた。

私たちが席にづくと、夫は弾かれたようにちがった。

「美咲……! 葵!」

夫はけない顔を綻ばせ、葵にを伸ばそうとした。しかし、葵はすっと私のろにを隠し、夫のを避けた。

夫のが、宙で凍りつく。

「……座って」

私がたく促すと、夫はさく頷き、所なさそうに腰をろした。

卓には、名デパートの包装で包まれたきな箱と、級菓子の袋が置かれていた。

「これ……葵と結にとって。最流ってるキャラクターのぬいぐるみと、プリン」

「ありがとう。でも、今は物を受け取りに来たんじゃないわ」

私は袋に触れもせず、バッグから田弁護士に作成してもらった婚姻費用の算定を取りし、テーブルの央に置いた。

「内容証にかれていた通りよ。あなたの収から算された、正当な婚姻費用は額万円。先未払い分の万円とわせて、今末までに指定座へ振り込んで」

夫の顔が、苦痛に歪んだ。

「万……!? すぎるよ! そんなに払ったら、俺の遣いも、の宅ローンも……母さんに毎渡してる仕送りだってせなくなる!」

「母親への仕送り?」

私の声が、自然とくなった。

「自分の実の子を飢えさせて、暴力を振るった母親に遣いを渡す余裕はあるわけね」

「美咲、言葉を選べよ! 母さんは暮らしなんだ! それに、俺は払わないなんて言ってない! 実から戻ってくれば、今まで通り計から全部すって言ってるだろ!」

夫はを乗りし、ジャケットの内ポケットから分い茶封筒を取りした。封筒のから、万円札の束が覗いている。

「ここに、万円ある。今の活費として、美咲に直接渡すよ。だから、頼むから弁護士を取りげてくれ。に戻ってきてくれ。母さんだって、美咲がちゃんとをげて謝れば、もう何も言わないって言ってるんだ」

卓に置かれた茶封筒。その々しい札束を見つめながら、私は自分のを疑った。

この男は、本気で言っているのだ。をげて謝れば、許してやる。万円の現を目のにぶらげれば、の妻が尻尾を振って戻ってくると、本気で信じ込んでいる。

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