"手切れ金百万、消えた一億三千万" 第10話
美奈がにしたレジ袋をに叩きつけるように投げ捨て、鳴り返した。
かつて私の私物であるバーキンを抱えて笑いしていた彼女の爪は、夜の居酒での過酷な皿洗いと清掃作業によってボロボロに割れ、マニキュアの面すら残っていなかった。化粧で隠しきれない目のの濃い隈と、荒れ果てた肌が、彼女の過酷な常を々しく物語っている。
「航平があんなバカな女に引っかからなければ……! あの栞っていう気な嫁が、素直にと事務所を差ししていれば、こんなことにはならなかったのよ!」
は通のすりにすがりつき、虚空に向かって唾を吐きかけるように喚き散らした。
「私は神崎の当主の妻よ! 昔は越の商が毎ひざまずいてやってきたのよ! こんな吹き溜まりみたいな所、私のいるべきところじゃないわ!」
「いい加減にしてよ! いつまで終わったを見てるの!?」
美奈が狂ったように母親の肩を突きばした。
「お兄ちゃんは刑務所! 私たちは破産者! 所のたちだって、あんたが毎声で昔の自話ばかりするから、気悪がって誰もを利いてくれないじゃない! 全部、見栄っ張りのお母さんのせいよ!」
「なんですって!? 親に向かってそのの利き方は何よ!」
狭い廊で、掴みいの喧嘩を始める母と娘。
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隣の部のドアが乱暴にき、の男性が鳴り声をげた。
「おい、うるせえぞ! 毎毎ギャーギャー喚きやがって! 警察呼ぶぞ!」
その声に縮みがり、いつくばるようにして暗い畳半の部へと逃げ込んでいくのろ姿。
ガチャリと無質な音をてて閉まった錆びた鉄扉を見つめながら、私は運転に静かに告げた。
「……をしてください」
窓のを流れる荒涼とした郊の景を眺めながら、私はので、あの族とのに完全に幕をろした。
の力で着飾った華やかさは、が吹けば吹きぶ砂のに過ぎない。
自分自のでち、汗を流して責任を果たすことをらなかった彼女たちは、これから、自分たちが作りした憎悪の牢獄ので、互いを呪いいながらきていくのだ。
それから季節は移ろい、厳しいの寒気が都を覆った。
神崎航平の刑事裁判は、京方裁判所で滞りなくめられた。
起訴事由は、業務横領、詐欺、私文偽造および同使、印私文偽造。
法廷に引きされた航平は、かつての傲な面を完全に失い、青い囚のような作業着にを包んで、ただを見つめて項垂れていた。
彼が弁護を通じて私に宛てて送ってきた数通に及ぶ「反省文」には、『栞、僕が悪かった』『もう度やり直したい』『君をしている』という勝な懇願がき連ねられていたが、私はそのすべてを度も封することなく、佐々弁護士を通じて裁判所へ「切の状酌量を求めない」
とする厳罰嘆願として提した。
判決は、懲役の実刑。
執猶予は切つかず、判決が言い渡された瞬、航平はそのに崩れ落ち、法廷警備員に両脇を抱えられながら退廷していった。
その背に、私は何のれみも覚えなかった。
民事訴訟においても、私の完全勝訴が確定した。
世田の邸宅に関するすべての占権と権利侵害に対する損害賠償、航平が横領した資の返還請求、そして条梨に対する慰謝料請求。判決に基づき、梨がんでいた港区のマンションは競売にかけられ、彼女のすべての個資産は法に差し押さえられた。
梨はその、実のある方都へと逃げ帰り、両親のと活保護に頼りながら、自己破産の制限に縛られた分で、ひっそりと暮らしているという。
そして、がけた。
の厳しさがらぎ、の半ばを過ぎた頃、世田の邸宅には、眩いばかりの柔らかなの陽がり注いでいた。
私はこのカをかけて、専のリノベーション業者と共に、の内装を徹底に清掃し、した。
が自己顕示欲のために飾っていた悪趣な彩のロココ調具や、壁を埋め尽くしていた由来のれない宗教画のような油絵は、すべて処分業者によって運びされた。