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"手切れ金百万、消えた一億三千万" 第9話

被害総額が億円を超えている、のペーパーカンパニーを通じたへの資産隠匿作というな証拠隠滅・逃の恐れがあります。起訴は確実、実刑判決は免れないでしょう。以の懲役刑が妥当なラインと見ています」

「そうですか……自業自得ですわね」

「それから、もうつご報告があります」佐々弁護士はし声を潜め、事務な調を崩さずに告げた。「世田の産執の現で、ひと悶着ありました。神崎氏と美奈氏の件です」

「あの、まだ何か抵抗を?」

「いえ……抵抗というよりは、もはや醜態です。京裁の執官が産の差し押さえと建物のけ渡しを制執した際、氏は『ここは私の息子のよ!』と叫んで玄関のがり框に爪をててしがみつき、婦警官名に取り押さえられました。

美奈氏に至っては、ブランド品のバッグや靴を抱え込んで勝から逃を図ろうとしましたが、敷で待していた執官代理に制止され、すべてリスト照ので没収されました」

佐々弁護士の報告によれば、の転落劇はそこにとどまらなかった。

航平がノンバンクや個投資から違法な利で借り入れていた額の借において、と美奈のが、航平に言われるがままに「連帯保証」

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として実印を押印していたことが発覚したのだ。

には、航平がどれほどの負債を抱えているかなどる由もなかった。「サインすれば、お遣いとして毎万円を座に入れてやる」という航平の甘言に乗り、内容も読まずに類に名をき連ねていたのだという。

結果として、の元には、総額億千万円を超える連帯保証債務の督促状が斉に送達された。

世田の豪邸から叩きされたそので、は弁護士会館の法律相談窓へ駆け込み、自己破産の申してをう以の選択肢を完全に失っていた。

「の元引受先は見つかったのですか?」

「親類縁者は、航平氏の逮捕と巨額の借をるや否や、全員が連絡先を着信拒否にして払いをらわせたそうです。結局、公なセーフティネットとして用されたのは、京都の端――川と昭島の境にある、築を超える都営宅の畳半でした」

話を切った、私はハイヤーの窓をけた。

夕暮れの涼なが、私の頬を優しく撫でていく。

かつて私を「資格しか取り柄のないな女」「子供も産めない寄虫」と罵り、級フレンチとブランド品に溺れていた々が、今や自らの欲望の沼にを取られ、奈落の底へと滑り落ちていく。

その景をい描いても、私のには復讐を遂げたという歓や揚は湧いてこなかった。

ただ、くかった悪がようやく終わりを告げ、当たりの正義が、当たりの所に収まったという静かな堵だけが、胸の奥を満たしていた。

それから週が経過した頃、私は調査報告の最終確認のため、都の片隅にあるその古い公営団を、から目に見届ける会を得た。

そこは、コンクリートの壁が黒ずみ、鉄製の非常階段が赤茶に錆びついた、昭の面を濃く残す階建ての団だった。エレベーターなどせず、狭い階段を民たちがそうにりりしている。

階の――塗装の剥げ落ちた鉄扉のに、見覚えのあるつのがあった。

神崎と、神崎美奈だった。

がにまとっていたのは、かつて世田のサロンで誇らしげに見せびらかしていた毛皮やカシミアのコートではなく、所のディスカウントスーパーのワゴンセールで調達したような、毛玉だらけの毛糸のカーディガンだった。その背は見るもなく曲がり、あれほど威厳を装っていた髪混じりの髪は、入れもされずにボサボサに乱れていた。

「美奈! あんた、今の仕送りはどうなったのよ! 気が止められるって通が来てるじゃないの!」

団の共用廊に、の切り声が響き渡った。

「うるさいわね、クソババア! 私のバイト代の万円なんて、部の更料とあんたの糖尿病の薬代で全部消えたわよ! 誰のせいでこんなボロアパートでネズミと緒に暮らさなきゃいけないとってんのよ!」

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