"離婚半年後、元夫が15年前の弁当箱を抱えて訪ねてきた" 第11話
遥ちゃんは目を見張り、それから今番の、相応のるい笑顔を見せた。
「格。美紀さんなら、お父さんを任せても丈夫そうだね」
を振って改札を抜けていく遥ちゃんの背を見送りながら、私はさく息を吐いた。
族という呪縛を解き、個の境界線を引くこと。
それはたさではなく、誠実さなのだと、改めて自分に言い聞かせるように。
翌週、誠さんは私のアパートを訪れた。
玄関先で渡されたのは、枚のしい図面だった。
古の階の取り図。
だが、そこには以のような『主寝』の文字はなかった。
『域コミュニティ読スペース&ワークショップ』
誠さんは照れくさそうにを掻いた。
「遥に、こっぴどくられたよ。『お父さんは無識に甘えてる。美紀さんの自を奪う気か』ってね」
「遥ちゃんが……」
「美紀さんの言う通りだ。私は君の優しさに甘えて、君を私の活に巻き込もうとしていた。階は、君が料理教の座学をやったり、域のが本を読んだりできる公共のスペースに改装する。君のアパートは、そのまま維持してくれ。私たちは、それぞれのを持ったまま、支えおう」
誠さんの言葉に、胸の奥のつかえがすっと消えていくのをじた。
対等であること。
相をい通りにしないこと。
このとなら、しい形の族を作っていけるかもしれない。
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そう確信した、まさにその夜のことだった。
アパートの部に戻り、いお茶を淹れてデスクに向かう。
公民館で催する第回目の料理教のウェブ予約が、今夜から始されることになっていた。
回の参加者からのコミもあり、応えはじていた。
分。
管理画面をリロードすると、名の定員はすでに埋まっていた。
「……良かった」
堵の息を漏らし、参加者名簿の確認作業に入る。
暮らしの男性、リピーターの主婦、しい代の女性……。
順調にスクロールしていた私の指先が、番の、最の目の欄でピタリと止まった。
ディスプレイの青いが、私の瞳を射抜く。
『氏名:田 修』
臓が、ドクンと嫌な音をててねた。
見違いかとい、瞬きをしてもう度見る。
所は、かつて私が暮らした、あの見慣れたマンション。
話番号も、会社のメールアドレスも、違いなく元夫のものだった。
そして、備考欄には、震えるような文字でこう打ち込まれていた。
『庭料理の基礎を、から学びたいです。迷惑はかけません』
喉の奥が、カラカラに干からびていく。
、私が台所につ姿を「飯炊き女」と見し、包丁本握ろうとしなかった男。
母親の介護に押し潰され、値引きシールのおにぎりを齧っていたはずの男が、受講料千円を支払い、私の教の席を買い取ったのだ。
「……どういうつもりよ」
画面のの無質な文字列を睨みつけたまま、私の指先は、氷のようにたくなっていた。
マウスを握る差し指が、わずかに痙攣した。
画面をもう度見直す。
『氏名:田 修』
見違いではなかった。
かつて私のを「ただ飯を作って洗濯するだけの係」と吐き捨てた男が、千円の受講料を払いし、番目の受講者として名を連ねている。
取り消しボタンにカーソルをわせた。
管理者権限を使えば、こので予約を制破棄できる。
「……待って」
私はさく息を呑み、マウスから指をした。
ここで逃げれば、相は「拒絶された」という被害者識を募らせ、別の形で執着をめるかもしれない。
これは区公民館が主催する、公な域事業だ。
私なで受講者を排除すれば、私の側のプロ識が問われることになる。
私は画面を切り替え、自返信とは別の、個別の確認メール作成フォームをいた。
キーボードを叩く指に、迷いはなかった。
『田修様。お申し込みを確認いたしました。本講座は公な域コミュニティ事業の環です。個な会話や接触、の受講者への迷惑為が見受けられた、規約に基づき即退および施設警備への通報をいます。受講規約を遵守いただけるのみ、当お越しください。
講師・佐藤美紀』
の切を削ぎ落とした、氷のようにたいビジネス文。