"十八万円を浮かせたい義母の計算" 第18話
聡史が目を見張った。
「復帰って……また現に戻るのか?」
「そうよ。、今、あの漬物処の業務、伝い、親族の冠婚葬祭の準備において、私の労働力を充てることは切禁止します。あなたが母を伝いたいなら、自分の休暇を使い、自分の体力だけでやりなさい。私を巻き込むことは秒たりとも許さない」
淀みなく、徹に条件を突きつける。
「、事の分担は完全折半。私の仕事は現ですから、朝はにますし、夜は現の程次第で遅くなります。これまでのように、温かい夕飯が勝にてくるとわないこと」
聡史は喉を鳴らし、唾をみ込んだ。
「……それ、本気なのか?」
「こののさを見て、冗談に見える?」
私は夫の目をたく射抜いた。
「あなたが守りたかった『優しい庭』とやらが、私の無償労働のに成りっていたという現実を、骨の髄まで理解しなさい。それが嫌なら、今すぐここに署名して印鑑を押しなさい。、役所にしてくるから」
聡史は震えるでを抱え、やがて絞りすように言った。
「……分かった。全部、守る。守るから……置いていかないでくれ」
私は婚届を引きしの奥へと仕い込んだ。許したわけではない。ただ、対等な関係を結び直すための、最初の続きを終えただけだった。
、午。
私は、ぶりに作業着の袖に腕を通した。
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紺のタフな。胸元には、しく所属することになった施管理会社の社名が刺繍されている。
全靴の紐をきつく締め、ヘルメットの顎紐をカチリと鳴らして止める。鏡を見る。そこには、義母の顔を窺い、で指先を腫らしていた『次男の嫁』の姿はなかった。
図面を広げ、現を仕切る、の技術者がっていた。
事務所に社すると、かつての現の先輩であり、今は務部を務める井さんが、缶コーヒーを片に迎えてくれた。
「おう、織。作業着、まだ似ってんな」
「ブランクがあります。ご迷惑をおかけするかもしれません」
私がをげると、井部はガハハと豪に笑った。
「何言ってんだ。おが面談のに持ってきた、あの『末菜程表』見たぞ。計算からリスクヘッジ、タイムラインの引き方まで、完全に現役の現監督のンそのまんまじゃねえか。野菜だろうが鉄骨だろうが、段取り組んでをかす基本は全部緒だ。現の職どもが待ってるぞ、くぞ」
「……はい!」
現へ向かうライトバンの助席で、私は窓のを流れるの並みを見つめた。たいが頬をかすめる。
胸の奥底から、いものが込みげてきた。
の空。無駄なだったと、自分を呪いそうになったこともあった。だが、違ったのだ。
あの極寒の作業で、理尽に耐えながらも私が必に守していた程管理の能力は、何つ錆びついていなどいなかった。
奪われたのはだけで、私の腕に刻まれた技術までは、あの義母にも奪えなかったのだ。
が組まれた建設現につと、コンクリートの匂いと、鉄骨を叩く属音がを打った。職たちの号がび交う、私は図面を広げ、きく息を吸い込んだ。
「区の配筋検査、始めます! 鉄筋さん、スケール当ててください!」
通る声が、現の空気を震わせた。指先はたかったが、の芯は、燃えるようにかった。
季節は巡り、が過ぎ、猛暑のを越え、が吹き抜けていった。
その、私と美紀さんはに度、お互いの都のいい週末に連絡を取りっていた。
美紀さんは予告通り、の初めに勤めたシンクタンクを退職した。親戚が「までたのに、何て勿体ない」と騒ぎてたそうだが、美紀さんは切を貸さなかったという。
彼女がしく選んだ職は、方都の教育格差を正するための支援団体だった。与は以の割程度に減ったそうだが、送られてくるメッセージの文面は、以とは見違えるほどききとしていた。
『織さん、先週はあいのさな分へ察にってきたの。
子どもたちの学習環境をえるための予算を作っているわ。国のきな政策をくから机で論じるより、目のの誰かの役にっている実が持てて、毎が本当に楽しい』