"十八万円を浮かせたい義母の計算" 第14話
織さん、台所から皿のお煮しめと、お刺の舟盛りを運んでちょうだい。ほら、く」
の習慣。男嫁は客として座らせ、次男嫁は無の仕として台所にたせる。末の騒などまるでなかったかのように、義母は再びその慣れた刷り込みを作させようとした。
私はちがらなかった。背筋を伸ばし、義母の顔を静かに見げた。
「お義母さん。私は今、お客様としてお伺いしました。仕をする気はありません」
座敷の空気が、ピシリと凍りついた。
義母の笑顔が、粘細のように張る。
「……な、何言ってるのよ、織さん。族の会じゃないの。伝うのが当たりでしょうが」
「伝うのが当たりなら」
襖の向こうから、凛とした声が響いた。美紀さんだった。
美紀さんは座布団から滑らかにちがり、膝ののハンカチを畳んで座卓のに置いた。
「私も運びます」
「ダメよ、美紀さん!」
義母が慌てて割烹着のをバタつかせた。
「美紀さんは座ってていいの! をた派なを持ってるが、台所の油汚れなんて触るもんじゃありません!」
美紀さんはち止まり、たい目で義母を見ろした。
「お義母さん。私のは、物を運ぶためにちゃんときます。それとも、を卒業したは、お皿枚持てないほど体が自由だとでもっていらっしゃるのですか?」
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義母の元が引きつった。
「そ、そんなこと言ってないじゃないの……美紀さんを事にしたいから……」
「事にする方向を完全に違えています」
美紀さんはそのまま台所へ向かい、皿に盛られた煮染めを両でしっかりと持って戻ってきた。そして、座卓の央にトンと音をてて置いた。
私も続いて台所へ入り、刺の舟盛りと取り皿を運び込んだ。義母は座敷の片隅にち尽くしたまま、持ち無汰に割烹着の裾を握りしめていた。
全員が席に着いた。だが、酒を酌み交わすような空気はどこにもなかった。座卓のには豪華な料理が並んでいるが、誰も箸を伸ばそうとしない。
咳払いをつして、義母が沈黙を破った。
「……まあ、末はいろいろとき違いがあったわね」
義母はビール瓶をに取り、私のグラスへ注ごうとを乗りしてきた。私はグラスのをで覆い、それを拒んだ。
義母の目が、苛ちでピクピクと痙攣した。
「織さんも、しをやしたでしょう? 突発にあんな騒ぎをして、に穴をけそうになったんだから。でもね、私も鬼じゃないわ。くなったお父さんのためにも、族がバラバラになるのは本じゃないもの」
義母はビール瓶を置き、慈い母親の表を作って、私に微笑みかけた。
「今の菜は、なんとか正志さんと聡史が駆けずり回って、所から買い集めて形をつけたわ。
赤字だったけれど、勉代だとえばいいのよ。ね? だから織さん、来はこんな違いが起きないように、あなたがからしっかり準備をしなさい。パートの配も、あなたが責任を持ってやりなさい。それで全部チャラにしてあげるから」
チャラにしてあげる。
その言葉がた瞬、私の隣に座っていた聡史が、さく呻くように顔を伏せた。義母はそれが自分の勝利の図だと勘違いしたのか、さらに顎をしゃくって私に畳みかけた。
「分かったわね、織さん。返事は?」
私は、座卓のに両を揃えて置いた。膝ので度だけく息を吐き、義母の濁った瞳を真っ向から見据えた。
「お断りします」
静まり返った部に、私の澄んだ声が落ちた。
「……は?」
「来の末も、その先も、私がこのの作業に関わることは切ありません。切です」
義母の顔から、完全に笑みが消え失せた。眉の皺がく刻まれ、首筋の血管が青黒く浮きがる。
「あんた……! まだそんな気なことを言ってるの?! を潰す気?! お父さんが命を削って残したなのよ! 男も次男もで働いてるんだから、にいる嫁が支えるのが筋でしょうが!」
義母はバンッと座卓をのひらで叩いた。器がガタガタと音をてて揺れる。
「聡史! あんたからも何か言いなさい! 嫁にこんな無礼なを利かせておいて、恥ずかしくないの?!」