"十八万円を浮かせたい義母の計算" 第13話
ずっとやりたかったことなのよ。ただ、国の諮問関に関わるような華々しさはなくなるし、収もがるわ」
「……お義母さんは、そのことを?」
「ったら卒倒するでしょうね。『をておいて、そんななところにくなんてみっともない』って。でも、もうどうでもいいの。の見栄を満たすために、私のがあるわけじゃないもの」
胸の奥が、いもので満たされていくのが分かった。
美紀さんもまた、戦っていたのだ。入れのき届いたい指先を誇るためではなく、押し付けられたな額縁を自らので叩き割るために。
「織さんは? これからのこと、何か考えているの?」
美紀さんの静かな問いかけに、私は自分の両を見つめた。赤く腫れ、節くれだった、現の職の。
「……昨夜、昔の仕事仲に連絡を入れました」
「ゼネコン代の?」
「はい。私が現監督をしていた頃、番お世話になった施管理の先輩です。ダメ元で、現に戻れる余はあるか聞いてみました」
「返事は、どうだった?」
私はスマートフォンの画面を指でなぞった。今朝届いた、ぶっきらぼうだが温かいLINEの文面が目に浮かぶ。
『ちょうど今、度末に向けて程管理ができるを血で探してる。織、ブランクなんか現に入れば週で埋まる。正がけたらすぐに事務所に来い』
「……席を用してくれるそうです」
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話の向こうで、美紀さんが息を呑む配がした。そして、底嬉しそうな、弾んだ声が返ってきた。
「素らしいわ、織さん。本当に、よかった」
「まだ、やれるかどうかは分かりません。のブランクは軽くないですし、体力も落ちていますから」
「やれるわよ。菜玉の程表をわずか分で完璧に仕げる現管理者が、どこにいるとうの? 胸を張って戻りなさい」
その言葉に、乾ききっていた喉の奥が、じんわりと潤っていくような覚を覚えた。
「はい。は、すべてを終わらせてきます」
「ええ。の夕方、母の玄関で」
通話を切り、私はちがった。クローゼットの奥から、にクリーニングにしたきり眠っていた、濃紺のパンツスーツを取りす。糊のきいた襟元に触れると、指先がピリリと引き締まった。
、午。
義理の実のをくぐると、母の格子窓から温かそうなのかりが漏れていた。玄関の引き戸をけると、煮染めの醤油と汁の甘い匂いが、たいに漂っている。
がり框に、見慣れたパンプスが揃えて置かれていた。美紀さんのものだ。
「お邪魔します」
私が声をかけると、奥の台所から義母が顔をした。緑の品な紬の着物に、晒しの割烹着をにつけている。その顔には、末に作業で見せた鬼のような形相は微もなく、まるで何事もなかったかのような、貼り付いた笑みが浮かんでいた。
「あら、織さん。いらっしゃい。寒かったでしょう」
「こんばんは」
靴を脱ぎ、板張りの廊へがる。義母は私の装――作業着ではなく、仕てのいいパンツスーツにコートを羽織った姿を瞥し、わずかに眉を寄せたが、すぐに嫌を取るような甲い声をした。
「さあ、がって。正志さんも美紀さんも、もう座敷にいるわよ。聡史、織さんが来たわよ」
座敷の襖をけると、畳の真んにきな漆塗りの座卓が据えられていた。座には男の正志さん、その隣に美紀さんが座っている。座の隅には、夫の聡史が所なげに縮こまり、所なさそうに元のビールグラスを弄んでいた。
正志さんが私を見て、痛ましそうにさくをげた。美紀さんは、静かに私と線をわせ、目元だけで微かに頷いた。
「織、座れよ」
聡史が掠れた声で言った。目のにい隈があり、末の数でらかにやつれていた。菜のを落とし、常連客へをげて回る作業が、いかにこの男の甘えた神経をすり減らしたかが目で分かった。
私が座敷の端に腰をろそうとした、その瞬だった。
「あ、織さん」
台所から戻ってきた義母が、私の肩にすり寄るようにして声をかけてきた。
「美紀さんは京から来て疲れてるんだから、座敷でゆっくりさせてあげて。