"十八万円を浮かせたい義母の計算" 第11話
「え……?」
私は目を瞬かせた。そんな話、初だった。
「お義姉さんが、伝いを申してくれたんですか?」
「ええ。話でお義母さんに直接伝えたわ。そうしたらね、お義母さんは何て言ったとう?」
美紀さんの唇が、たく吊りがった。
『美紀さん、気持ちは嬉しいけれど絶対に来ちゃダメよ。織さんがね、「の配は全部私が完璧にやってるのに、京の義姉さんに来られたら指図されてるみたいで気分が悪い」ってっているの。あの子、プライドがいから、自分のを荒らされたくないのよ』
臓が、ドクンと嫌な音をててねた。
「……は?」
私のから、乾いた声が漏れた。
「私、そんなこと言も言っていません! あの、注文が捌ききれなくて、私はでしか寝ていなかったんです! 誰でもいいから伝票を打ってくれって、聡史に泣きついていたくらいなのに……!」
「やっぱりね」
美紀さんはく頷いた。その顔には、驚きではなく、パズルの最のピースがハマったのような、徹な確信が浮かんでいた。
「じゃあ、これはどうかしら。織さん、あなたはお義母さんからこう聞かされていなかった?」
美紀さんはテーブルのに両肘をつき、私の目を覗き込んだ。
「『美紀さんは京で忙しいし、を使う勉ばかりしてきただから、台所の臭い仕事なんて絶対に触りたくないって言っているのよ』って」
広告
「……っ!」
鳥肌が、腕全体にざわりと逆った。
聞かされていた。度や度ではない。、事あるごとに、呪文のように聞かされ続けていた言葉だった。
『美紀さんはが汚れるのが嫌いだから』『あのは学問のだから、台所仕事なんて見してるのよ』『あんたがやってあげなきゃ、男の顔がたないでしょ』
義母のあの粘りつくような声が、の奥で鮮に蘇る。
「……全部、お義母さんの作り話だったんですか」
私の声が震えていた。りではない。あまりの気悪さに、背筋が凍りついていた。
「そうよ」
美紀さんは氷のようにたい声で、そのカラクリを解きかした。
「お義母さんは、最初から私たちを分断するつもりだったのよ。私には『織さんがを張って伝いを拒絶している』と吹き込み、あなたには『美紀がで伝いを嫌がっている』と吹き込んだ。そうやってお互いに信を植え付けて、直接会話をさせないように壁を作っていたの」
なぜ、そんなことを。問いかけるに、答えはだった。
もしの嫁が結託したら。もしが直接言葉を交わし、報共を始めたら。
義母がかけて作りげてきた、『卒の男嫁をトロフィーとして飾り、現叩きげの次男嫁を無の奴隷として使い潰す』という歪んだ搾取の王国が、瞬で崩壊してしまうからだ。
「なんて……悪趣な」
私の喉から、絞りすような呟きが漏れた。。私たちは同じ根のにいながら、互いに義母が仕掛けた虚像を見せられ、勝に距を置き、勝に軽蔑しっていたのだ。
「ええ、本当に胸が悪いわ」
美紀さんはめ切ったコーヒーを気にみ干した。そして、バッグのから冊のいスケジュール帳を取りし、ペンをらせた。
「でもね、織さん。お義母さんの計算違いは、私たちが彼女のっている以に、論理なだったことよ」
美紀さんは顔をげ、私を真っ直ぐに見つめた。その瞳には、今朝までの迷いや疲労は微も残っていなかった。獲物を正確に仕留める徹なアナリストのが、そこにあった。
「織さん、がけたら、正志さんと聡史さんを交えて、親族全員で事会をすることになっているでしょう」
「……ええ。お義母さんが『末のわだかまりを解くために、みんなで顔をわせましょう』って、聡史に連絡してきていました」
「そう。お義母さんは、そこであなたをもう度引きずり込んで、来の漬物の約束を取り付ける気よ。『族なんだから、に流しましょう』って、いつもの曖昧な緒論でね」
美紀さんは帳をパチンと閉じた。
「その事会、緒にきましょう」
「お義姉さん?」
美紀さんは、の付きいので、度も見せたことのないような、く鋭い笑みを浮かべた。
「私たちが分の答えわせを、お義母さんの目のでしてあげるのよ」