みかん小説
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"十八万円を浮かせたい義母の計算" 第9話

私はそのすべてを既読スルーした。通をミュートにし、溜まっていた洗濯物を片付け、窓ガラスを拭き、久しぶりにゆっくりと所のスーパーへ買い物にかけた。

スーパーの野菜売りには、丸々と太った派な菜が並んでいた。玉、百円。その横を通り過ぎる、私の指先はもう度も痛まなかった。

現を捨てたのではない。最初から私の現ではなかった所に、正しい所者を返しただけだ。

そして、。晦の午半。

私は自宅マンションからで分ほどれた、国沿いの古い純喫茶にいた。創業の、褪せたベルベットのソファと、真鍮のランプが灯る静かなだ。末の夕暮れということもあり、客はまばらで、奥のボックス席にはクラシック音楽がく流れていた。

約束の分、カランコロンとドアのベルが鳴った。

入ってきた美紀さんは、濃紺のウールコートにを包んでいた。髪をろでつに束ね、化粧気はい。目のには、このの修羅を物語るような、うっすらとした隈が浮かんでいた。

彼女は内を見回し、私と目がうと、さくをげてに歩み寄ってきた。

「待たせてしまったかしら」

「いいえ、私も今着いたところです」

美紀さんはコートを脱ぎ、ソファの背もたれに掛けた。

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黒いタートルネックの胸元には、華美なアクセサリーは何つない。員が運んできたおをみ、ブレンドコーヒーをつ注文した。

ウェイトレスがり、テーブルのに静けさが戻る。

「……の方は、どうなりましたか」

私が切りすと、美紀さんは苦笑いを浮かべた。それは、疲れ切ったの、けれど憑き物が落ちたような笑みだった。

「なんとか、今の引き渡し分だけは配り終えたわ。所から分けてもらった浅漬けを、事を説してをげて買ってもらったの。『がいつもと違う』ってって帰られた常連さんもいたけれど、当然の報いよ」

「お義母さんは?」

「奥の座敷で寝たきりよ。売が例の分の以になって、仕入れの持ちしで通帳の残が減ったのを見て、本気で寝込んでいるわ。『織さんに裏切られた』って、ずっと同じことを呟いている」

「そうですか」

私のは、さざ波つたなかった。裏切ったのではない。契約のしない搾取から、正当に脱しただけだ。

「聡史さんも正志さんも、両の皮が剥けてシップだらけよ。正志なんて、たった玉洗っただけで『度とやらない』って音をげていたわ」

美紀さんは運ばれてきたコーヒーカップを両で包み込んだ。そして、その湯気を見つめながら、静かに語り始めた。

「織さん。

私ね、ずっとあなたに言わなければならないとっていたことがあるの」

「何でしょう」

「私は……あなたに嫉妬していたのよ」

ってもみなかった言葉に、私はわず目を見張った。

「……私が? お義姉さんに?」

「ええ」

美紀さんは自嘲するように元を歪めた。

「お義母さんは、親戚が集まるたびに私のことを触れて回るでしょう。『うちの男嫁はでね』『京の研究所で国をかす仕事をしてるのよ』って。私、あのが本当に苦痛だったの」

美紀さんの指先が、コーヒーカップの縁をく撫でた。

「法事のたびに、私は座敷の番座に座らされて、くことを禁じられた。お茶杯運ぶことすら『美紀さんはいいのよ、そこに座って派なお話を聞かせて』って。周囲の親戚からは品定めするような目で見られ、しでも仕事の愚痴を言えば『てるのに変ねえ』と皮肉交じりに笑われる」

私は黙ってを傾けた。

「、私が主導していた政策提言のプロジェクトが、政権交代の煽りを受けてに戻されたことがあったの。数分の努力がになって、精神に本当に限界で、療内科に通いながら実に帰省したことがあったわ」

「……そんなことがあったんですか」

「ええ。でもね、そのもお義母さんは、集まった親戚のでこう言ったの。『美紀さんはだから、仕事も順満帆で引くあまたなのよねえ』って。

……私、そので吐きそうになったわ」

美紀さんの瞳に、暗くたいが宿っていた。

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