"十八万円を浮かせたい義母の計算" 第7話
「……丈夫です。を抜いてありましたし、の逃がし方は現で慣れていますから」
「そう。ならよかった」
美紀さんの声は、どこまでもフラットだった。そして、ほんの数秒の沈黙の、静かに言った。
「今朝のことは、本当にごめんなさい」
私は眉をわずかにひそめた。
「お義姉さんが謝る必はありません。あれはお義母さんが勝に決めたことです。お義姉さんにをげられる筋いのものではありません」
「いいえ。お義母さんの代わりとして謝っているわけじゃないの」
美紀さんはきっぱりと言い切った。
「私自の落ち度として、謝っているのよ。あのにいて、状況の異常さに気づくのが遅すぎた。織さんがであの異常な作業にたされていた理由を、もっとく正確に把握すべきだったわ」
受話器を握るに、しだけ力が入った。
「……状況、ですか」
「ええ。あなたがをして作業をてったあと、お義母さんは半狂乱になっていたわ。『気だ』『嫁の分際で』って、母の座敷を歩き回って。聡史さんもオロオロするばかりで、何の役にもたなかった」
淡々とした、まるで事故現の客観な状況報告のような調だった。
「私は作業に残って、あなたが残していったメモと、PCから送られてきた引き継ぎを読ませてもらったの。正志さんにも見せたわ」
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「読みましたか」
「読んだわ。玉の菜。総量百キロ。塩分濃度の計算、揚げの温度管理、予約客件の引き渡しタイムライン」
美紀さんはそこで度言葉を切り、く息を吸い込んだ。
「あれは庭の事じゃない。完全に、品製造業の規模ラインそのものよ。それをパート分の万円を浮かすためだけにキャンセルして、素である族で回そうなんて、正気の汰じゃないわ。経営判断として致命なエラーよ」
私はわず、乾いた笑いを漏らしそうになった。
義母が「たかが漬物」と切り捨て、夫が「おならできるだろ」と押し付けたを、このはわずか数分で、数字と構造の面から正確に解読していた。
「お義母さんはね、私が引き継ぎを読みげたらこう言ったのよ。『美紀さんはてるんだから、何かいい恵があるでしょう。織がいなくても、のいいが指図すれば何とかなるわよね』って」
「……お義母さんなら、言いそうですね」
「ええ。だから私は、お義母さんの目を見てはっきり申しげたわ」
美紀さんの調が、段とたさを増した。
『をたからといって、菜玉をで漬けられるわけではありません』
吹きしそうになった元を、私は袋をしたばかりのたいのひらで押さえた。
「お義母さん、なんて顔をしていました?」
「息を止めて、魚みたいにをパクパクさせていたわ。それから、『美紀さんはたいのね』って、自分の部に閉じこもってしまった」
静まり返った私のリビングに、美紀さんの淡々とした声が落ちていく。
「卒なんて、ただ歳そこそこの頃にペーパーテストの点数が良かったというだけの話よ。の氷にを突っ込んで、繊維を傷めずに菜を割る技術の役にはミリもたない。それをお義母さんは、あなたを無でこき使うための『便利な免罪符』として利用した。……それに加担する形になっていた自分が、底恥ずかしいわ」
私は子の背もたれに体を預けた。胸の奥に、ずっと溜まっていたドロドロとしたヘドロのようなが、ゆっくりと形を変えていくのをじていた。
「お義姉さん」
「何かしら」
「つだけ、聞いてもいいですか」
「ええ、何でも」
「お義姉さんは、私が毎この期、んであのを伝っているとっていたんですか?」
話の向こうで、美紀さんの気配が微かに揺れた。
「……正直に言っていいかしら」
「お願いします」
「っていたわ」
何の言い訳もない、潔い肯定だった。
「お義母さんから、ずっとそう聞かされていたの。『織さんは実務肌で、体をかすのが好きだから』『現の仕切りが得で、このの漬物が番のきがいなのよ』って。
毎、京に送られてくる樽詰めの漬物にも、お義母さんのが添えられていたわ。