みかん小説
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"夫の「俺の奢り」は、私のカードでした" 第11話

帰国便の内でも、成田空港の到着ロビーでも、藤沢のに会話は切なかった。

かつて私が配していたような、空港から自宅まで滑らかに送迎するハイヤーはない。各自が銭を切り、いスーツケースを引きずりながら、成田エクスプレスの指定席へと散っていった。

正斗は終始、何かに怯えるようにスマートフォンの画面を凝していた。だが、その端末が鳴ることは度となかった。望美からの返信はなく、会社のメールアカウントはセキュリティロックがかかったままだ。

苗はといえば、まるで気を吸い取られた抜け殻のようだった。髪が目ち、背は丸まり、あんなに誇らしげに被っていたつば広の子は、くしゃくしゃに潰れて膝のに置かれていた。

翌朝、午。神奈川県内にある藤沢の本宅。入れのき届いた本庭園を臨む畳の広に、族が集められていた。

座に腰をろすのは、義父・耕造。その表は、半世紀にわたり会社を率いてきた創業者としての峻厳さを取り戻していた。隣には、顔面を気にした苗。座には、正斗、彩、直のがを縮めて座っている。

「全員揃ったな」耕造のく濁った声が、静まり返った広に落ちた。

「礼子さんを呼べ」

襖が静かにいた。私は背筋を伸ばし、淀みのない取りで部へを踏み入れた。

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濃紺のスーツにを包み、にはい革のブリーフケースを抱えている。

「おはようございます、お義父様」私は礼し、正斗の正面に正座した。度も夫と線をわせることはなかった。

正斗の目のには、赤黒い隈が張りついていた。私の顔を見るなり、脂汗の浮かんだ顔を歪め、縋るような、それでいて威嚇するような線を投げてくる。

「礼子さん、わざわざすまない」耕造がくをげた。名誉会である義父が、嫁に対してをげる異様な景。苗の肩が、ビクリとねた。

「マルセイユでの件、そして会社での監査について、おから正確な事実を聞きたい。正斗は何も話さん。昨夜からずっと『事務なき違いだ』の点張りだ」

「わかりました」私はブリーフケースのジッパーをけ、冊の分いファイルを漆塗りの座卓のに置いた。表には、『内部監査委員会・報告』の文字が印字されている。

「昨の夕刻、社取締役および独監査の川さんを交えた監査委員会が終いたしました。これはその正式な報告です」

私はページをめくり、耕造のに差しした。

「今回の欧州渡航において、正斗本部が提した経費申請のうち、正当な業務関連費として認められたのは、バルセロナでの取引先社との面談費用、約万円のみです」

「……何だと?」耕造の眉が険しくねがる。

「それ以の費用――クルーズのスイートルーム差額、客アップグレード代、内での額なプライベート代、そしてマルセイユでの専用ハイヤーの配料など、総額百万円について、会社は『個遊興費の正流用』と認定しました」

「礼子! てめえ、親父ので何をデタラメ言ってんだ!」正斗が座布団を蹴るようにしてを乗りした。唾がぶ。

「デタラメではありません。客先の同席実態のない領収、野代表個への過剰な便益供与のログ、すべて監査部がデジタルフォレンジックで復元・保全済みです」私は眉つかさず、徹に正斗を射抜いた。

「さらに、野望美代表の広報代理から、今朝未、監査部宛に正式な弁護士面が提されました」

正斗の呼吸が止まった。「……は? 望美が……?」

「ええ。彼女は『正斗本部から会社承認済みとの虚偽の説を受けていた』と主張し、正と指摘された費および差額負担分、計百万円を会社座へ全額即返還しました」

「嘘だ……望美が俺を裏切るはずがない……!」

「彼女は経営者です。会社と自分の社会信用を守るため、あなたを切り捨てたのですよ。彼女の弁護士からは、あなたが個に送った『旅が終わったら妻と婚する』『会社のおで処理するから配いらない』というメッセージの魚拓も、証拠としてすべて提供されました」

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