"夫の「俺の奢り」は、私のカードでした" 第6話
ガサガサと激しいノイズがり、男の荒々しい声がスピーカーを突き破った。
『おい礼子! てめえ、母親に何を吹き込んでんだ!』
夫、正斗の声だった。焦燥とりでずり、喉を絞められた獣のような濁った響き。
「吹き込む? 事実を申しげただけです」
『事実だあ!? 監査をかしたのもおだな! 川の野郎に何を吹き込んだ! 今すぐ利用止を解除させろ! 親父の、どうすんだよ!』
「会社のでを連れ回したが、よくそんなを利けますね」
『倫なんか関係ねえだろ! これは欧州の取引先拓だ! 正当な張だぞ!』
「ええ、ですから仕事だった部分は、帰国に監査で客観な証拠をしてください。私活の精算については、弁護士を通してお話しします」
『は……? 弁護士……? おい、ふざけんな! ここはフランスだぞ! 俺たちをこんな異国ので見殺しにする気か!』
「見殺し? 命までは取られませんよ。元にご自のカードがあるでしょう」
『限度額がりねえんだよ! ホテルのデポジットもハイヤー代も、まとまった枠がいるんだ!』
「それは、ご自の信用力です」私は淡々と切り捨てた。「の名義にぶらがって見栄を張ってきたツケを、ご自分で払ってください」
『礼子! おい、礼子ッ――!』
私は指先を滑らせ、赤い通話終ボタンをタップした。喚き声は、ブツリと途絶えた。
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役員に、再び静寂が戻る。私はスマートフォンを伏せ、く息を吐きした。のひらに、汗はかいていなかった。
照りつけるマルセイユの陽の。通話が切れたスマートフォンの画面を、正斗は血った目で見つめていた。
「切られた……? あの女、俺の話を切りやがった……!」
「正斗、どうなったの!? 礼子さん、解除してくれるの!?」苗がすがるように息子の腕に爪をてた。顔はのようにく、つばの広い子ので目が泳いでいる。
「……解除するわけねえだろ!」正斗は母のを乱暴に振り払った。
「痛っ……! なんでそんな乱暴にするのよ! 私、あなたのために……」
「母さんが余計な話をかけるからだろ!」正斗が喉を裂くような声で鳴り返した。
「は……?」苗のきが止まる。
「母さんが『嫁には黙っておけばいい』なんて言っておきながら、向こうでオロオロ取り乱して話なんかするから、あいつに元を見られたんだよ!」
「な、何言ってるの……? 私は、あなたの方をして……」
「頼んでねえよ! 母さんが勝に張り切って望美を呼ぼうなんて言いさなきゃ、こんなことになってねえんだよ!」
埠のアスファルトので、正斗の声が霊した。通のフランスたちが、眉をひそめてち止まる。
苗はを半きにしたまま、息子の顔を見つめていた。、塩にかけて育ててきた自の息子。
常に自分の方であり、母親である自分を誰よりもててくれるはずだった「優しい正斗」。
その息子が、いま自分に向かって、憎悪に歪んだ目を向けている。喉の奥が引きつり、呼吸がうまく吸い込めない。
「……正斗さん」ややかな、氷のような声が割り込んできた。
野望美だった。級ブランドのサングラスを額に押しげ、腕を組んでち尽くしている。その元には、埃まみれのスーツケース。
「みっともないから、鳴るのやめてくれない? 周りの、みんな見てるんだけど」
「望美、おは黙ってろ!」
「黙ってろですって?」望美の唇が、嘲るように吊りがった。
「私、あなたの顔をてて、わざわざここまで付きってあげたのよ? スイートルームで優雅にバカンスを過ごせるって言ったのは誰? カード枚通らなくて、荷物を端に放りされて……恥ずかしくてにそうなんだけど」
「今、配し直してる! 俺の座から現をかせば何とかなるんだ!」
「じゃあくしてよ。差しでメイクが崩れる」望美は吐き捨てるように言うと、背を向けてスマートフォンを操作し始めた。その背には、先ほどまでの「甲斐甲斐しいパートナー」の面など、微も残っていなかった。
「……正斗」く、濁った声が響いた。
義父の耕造だった。の老躯を杖に預け、眉根を険しく寄せて息子を凝している。
「親父……」
「さっきから聞いていれば、礼子さんがどうしただと? なぜ礼子さんのカードが止まる? なぜ会社の監査がいているんだ」