"「妻も了承した」夫が勝手に約束したのは、亡き母のマンションだった" 第11話
私はそれ以、言葉をねなかった。 寝へ向かい、クローゼットからスーツケースを引きずりす。
「おい、奈美!? 何してんだよ!」 慌てて追いかけてきた夫が、け放たれたスーツケースを見て声をずらせた。
私は際よく、着替えと通帳、母の遺品の、そして産の売却類を詰め込んでいく。
「ていくわ。あなたと暮らす理由は、もう秒も残っていない」
「はあ!? 待てよ! ちょっと昔のLINEのことで、何げさに騒いでんだよ! 族を捨てる気か!?」
夫が私の腕を掴もうとを伸ばしてきた。 私はそのを、汚らわしい虫でも払うように鋭く叩き落とした。
「触らないで」
氷のような私の声に、夫のきが完全に止まった。
「いうちに、弁護士から連絡がいきます。度と私のに現れないで」
スーツケースのジッパーを引きげ、私は玄関へと歩きした。 背で夫が「おい! 奈美! 待てって!」と叫び声をげている。
だが、私は度も振り返らなかった。 ドアをけ、夜のたいのへと、力くを踏みした。
ビジネスホテルのいベッドに腰をろした瞬、張り詰めていた空気がわずかに緩んだ。 静まり返った客。 窓のには、見慣れないのネオンがたく滲んでいる。
元のスマートフォンには、夫からの着信が何件も積みなっていた。 『奈美、頼むから戻ってこい』 『話しえば分かる。
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俺が悪かったところは直すから』
画面をタップすることなく、私は源を落とした。 謝罪の皮を被った、ただの保。 あのが恐れているのは、私を傷つけたことではなく、「優しい夫」という虚像が崩壊することだけだ。
翌朝、私は休暇を使い、以から目をつけていた単者用のアパートを即で契約した。 敷と礼は、私の独代の貯から支払った。 母のマンションの売却代には、円たりともをつけない。
そので、駅の法律事務所の扉を叩いた。 応接のテーブルに、母の遺産分割協議、マンションの売買契約、そして通帳の写しを並べる。
「結論から申しげますと、奥様が単独で産を売却されたことに、法な瑕疵は切ありません」
老練の弁護士は類をめくりながら、に告げた。 「婚姻、あるいは相続によって取得した資産は特財産です。ご主の同は必ありません」
「もうつ、確認したいことがあります」 私は帳をき、に母のマンションの湯器と配管を修理した際の領収を差しした。 額は、万円。
「当、元の現がりず、夫婦の共通座から修繕費を捻しました。夫はこれを根拠に、自分にも所権があると主張しています」
弁護士は領収と通帳の引き落とし記録を見比べ、く笑った。
「費用を部負担したからといって、所権が共になることはありません。せいぜい財産分与ので、ご主が実質負担した額を銭で精算するだけの話です」
「分かりました」 私は迷わず頷いた。
「夫が負担した分は、円単位まで正確に計算して現で返還します。あのおを私の資産から完全に切りしてください」
あのに、「を奪われた被害者」という逃げすら与えない。 すべての貸し借りを清算し、完全な赤のへと叩き落とす。 それが、私の決めた筋だった。
週け、別居の事実をった義実から連絡が入った。 送り主は義母だった。
『親族同で話しいをします。今週末、実に来なさい。叔母さんも同席します』
佐藤。義母の妹で、親族の集まりには必ず顔をすうるさい親戚だ。 夫は母親に泣きつき、親族の数で私を吊しげようとしている。 自分が番得とする「衆環のでの同調圧力」を使って、私を屈させる算段だろう。
逃げる気は毛なかった。 台がっているなら、そこで全てを終わらせればいい。
曜、午。 義実の玄関をけると、苦しい沈黙が私を迎えた。
居には、すでに全員が揃っていた。 座に義母と、険しい顔をした叔母さん。 その向かいに、やつれた顔の夫。 座にい所に、い表の綾子さんと真紀さん。
私が座布団に座るなり、義母が座卓を叩いてを切った。