"「妻も了承した」夫が勝手に約束したのは、亡き母のマンションだった" 第5話
族の歪な均衡の真んに、自分が「唯の調者」として君臨するために。
夕方、玄関の鍵がき、夫が帰宅した。 どこかやつれた顔をしていたが、リビングにいる私を見るなり、いかにも疲れ果てたような溜息をついてみせた。
「奈美、ちょっといいか」
ソファに腰をろし、額にを当てて私を見げてくる。 被害者を演じるの、あののお決まりのポーズ。
「母さん、昨からずっと寝込んでるんだよ。血圧もがっちゃってさ」
「……そう」
「綾子も真紀も、む所が見つからなくて途方に暮れてる。俺がに入って必に宥めてるけど、限界があるよ」
私は洗濯物を畳むを止めず、平然と返した。
「それで?」
「奈美から母さんに、形だけでもいいから謝ってくれないか。売却を取り消せとは言わない。ただ、『相談もせずに勝に話をめてごめんなさい』って言をげてくれれば、母さんの気も済むから。あとのフォローは全部俺がやるからさ」
どこまでも、自分のを汚さずに済ませる算段。 私の尊厳を差しすことで、自分の嘘をチャラにしようという浅ましい魂胆。
私は畳んだタオルを丁寧にね、夫の目を見据えた。
「分かったわ」
夫の顔に、あからさまな堵のが広がった。 「本当か? よかった、奈美なら分かってくれるとってたよ」
「ただし、私は自分の資産を売ったこと自体を謝るつもりはないわ。
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族への連絡がき違いになって、余計な混乱を招いたことについてだけ、遺憾のを伝える。それでいいなら」
「ああ、それで分だよ! 母さんには俺からうまく伝えておくから!」
夫は弾んだ声で言い、スマートフォンを握りしめて洗面所へ消えた。 背で閉まるドアの音。
私は自分のスマートフォンをに取り、画面を凝した。 数分もしないうちに、夫の「報告」の結果が届くはずだ。
予は、分にした。
通音が鳴り響き、画面に義母からの個別メッセージが表示される。
『悟から聞きました。あなたもようやく、自分がどれだけ勝で非常識な真似をしたか認めたそうね。最初から素直に謝ればいいものを、本当にげのない嫁。、実に来て全員ので座しなさい』
指先が、りでわずかに震えた。 遺憾のを伝えると言ったはずの私の言葉は、夫のフィルターを通った瞬、「妻が全面伏して非を認めた」という報告にすり替わっていたのだ。
あのは、反省などしていない。 ただそのしのぎの嘘を塗りね、私を沼へ引きずり込もうとしている。
私は迷わず、指をかした。 夫、義母、綾子さん、真紀さんが揃う族グループをく。
そして、先ほど夫と交わした個のLINEトーク履歴を、そのままスクリーンショットにしてグループへ投した。
『私は自分の財産を売却したことについて謝罪するつもりは切ありません。連絡がき違いになった点についてのみ遺憾を伝えると悟さんに話したはずですが、なぜお義母さんには「全面な非を認めた」と伝わっているのでしょうか? 悟さん、説してください』
送信。 グループが、瞬で凍りついた。
洗面所のドアが、勢いよくいた。 スマートフォンを握りしめた夫が、血相を変えてびしてくる。
「奈美! お、何グループに変な画像晒してんだよ!?」
「変な画像? あなたと私の事実のやり取りよ。何が都なの?」
「族のグループにこんなもの送ったら、母さんが余計にるだろうが! 俺がせっかくに入って丸く収めようとしてたのに、ぶち壊す気か!」
唾をばして喚く夫の顔を、私はややかに見つめ返した。
「丸く収めるって、私の言葉を都よく改ざんして、お義母さんに座しろと言わせること? あなたがやっているのは調じゃない。ただの隠蔽よ」
夫は息を詰まらせ、顔を真っ赤にしてをパクつかせた。 その、グループLINEに綾子さんからのいメッセージが投稿された。
『、みんな実に集まって。お兄ちゃんも、奈美ちゃんも。これ以LINEで話すのはやめよう』
続けて、真紀さんからも。 『賛成です。の午、全員顔をわせて話しましょう』
逃げは、完全に塞がれた。
夫はスマートフォンの画面を睨みつけ、忌々しそうに爪を噛んだ。