みかん小説
本棚

"実母の50万円、義母の500万円" 第7話

私はを交えずにく相槌を打った。

「ああ! だから美咲、当は頼むぞ。夫婦揃って笑顔で母さんを祝ってやろうじゃないか」

夫は私の返答を「」と受け取ったのか、満そうにビールを煽った。

すべてが自分の都通りに運ぶと信じ込んでいるその横顔を、私は底えのする瞳で観察していた。

事会の、私はで義実を訪れた。

玄関先で迎えた義母は、お気に入りの着をハンガーに掛けながら、嫌でをっていた。

「あら美咲さん、の打ちわせかしら? わざわざ来なくても、は美しいお料理をいただく席なんだから」

義母はすっかり元気を取り戻し、座のソファに優雅に腰をろした。

「お義母さん、のにつだけ確認させてください」

私はったまま、バッグから枚の用を取りした。

「公平から、実の査定を見せてもらいました。このと、千百万円の価値があるそうですね」

義母の笑顔が、ぴたりと固まった。

「……査定? 公平がそんなものを?」

「ええ。公平は私にこう言いました。『将来このを処分して百万円を返すから、今すぐ入居をて替えろ』と」

義母の眉が、そうにピクリとねがった。

「私が施設に入れば、いずれあのを公平たちに継がせるのは自然な流れでしょう。何が言いたいの?」

広告

「公平は、お義母さんがくなったの売却益を、今から自分のとして勘定しています」

私は歩踏み込み、義母の目を真っ直ぐに見据えた。

「公平が守ろうとしているのは、川の誇りでも、お義母さんの適な老でもありません。自分が将来に入れる千百万円の遺産です」

義母の顔が、徐々に青ざめていくのが分かった。

「お義母さんの財産にをつけて施設代を払うと、自分の取り分が減ってしまう。だから私の独代の貯を代わりに使おうとしているのです」

「……公平が、そんな計算を?」

義母の声が、微かに震えていた。

「もし、親戚ので公平をてるおつもりなら、その事実をよく覚えておいてください」

私はく礼し、それ以は何も言わずに義実をにした。

息子の見栄と、母親の欲。

固く結ばれていたはずの勝な同盟に、確実な亀裂がった瞬だった。

そして、事会の当。

駅にある級の個には、豪奢な会席料理が並べられていた。

座には等なスーツにを包んだ義母、その隣には文伯母と親戚の叔父夫婦が座っている。

末席には、方からわざわざ呼びされた義弟の健太の姿もあった。

「いやあ、代さんもすっかり元気になってよかったよ」

親戚の叔父が盃を傾けながら、嫌で声を張りげた。

「それにしても公平君はしたもんだ。母親のためにあんな派な施設を用するなんて、さすが男だな」

文伯母も満そうに頷き、義母の元にお酌をした。

「本当よ。このの話を聞いたはどうなるかとったけれど、やっぱり頼りになるのは男ね」

夫の公平は、満面の笑みを浮かべてちがった。

「男として当然のことをしたまでです。母さんには今まで苦労をかけましたから」

親戚から注がれる賞賛の差しに、夫は完全に酔いしれていた。

居並ぶ料理の湯気と、酒の匂いが部に充満している。

夫はチラリと私を見ろし、促すように顎をしゃくった。

「美咲も、母さんのためにいろいろと奔してくれたんだよな?」

妻を巻き込み、美談の共犯者に仕てげようとする浅ましい線。

私はゆっくりとグラスを置き、膝ののナプキンを静かに畳んだ。

「いいえ。私は何もしていません」

凛とした声が、賑やかな個の空気を真っつに切り裂いた。

夫の笑みが、氷が張り付いたように直した。

「……おい、美咲。何を言ってるんだよ」

「公平、あなたは親戚の皆さんに、その百万円がどこからるのか説したの?」

私は穏やかな笑みをたたえたまま、バッグから通の茶封筒を取りした。

「み、美咲! 今は母さんの祝いの席だぞ! 変な気を起こすな!」

夫が慌ててを伸ばしてきたが、私はを引いてそのを鮮やかにかわした。

封筒から取りした枚の類を、テーブルの央へ広げる。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: