"実母の50万円、義母の500万円" 第2話
「続きがややこしいんだ! とにかく回、俺の座に入れてくれないとにわないんだって!」
追い詰められた夫の受話器の向こうから、く別の声が混ざり込んだ。義弟である健太の、緊迫した声だった。
「兄貴、どうなった? の窓が閉まるぞ」
話の向こうで義弟が焦ったように叫び、夫が受話器を覆って鳴り返す気配が伝わってきた。病院の待で、なぜの窓を気にしているのか。
「ねえ公平、今健太さんがって言わなかった?」
「ち、違う! なんでもない! 今て込んでるからでかけ直す!」
方に通話が切られ、無質なツーツーという音が響いた。背筋にたい汗が流れる。百万円は治療費などではなく、夫は義母の搬送を利用して私の預を騙し取ろうとしているのだ。
私は即座に半休を申請し、タクシーにび乗った。病院の総受付で義母の名を告げると、脱とめまいによる点滴処置を受けており命に別状はないと告げられた。夫が喚き散らしていた術の話は、完全な捏造だった。
処置の待フロアにがると、落ち着きなく歩き回る夫と青ざめた健太の姿があった。私は音をててのに歩み寄り、静かにち止まった。
「公平」
「み、美咲……!? なんで、仕事はどうしたんだよ」
「お義母さんが倒れたのに、悠に仕事なんてしていられないでしょう」
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私はえ切った線を夫に据えた。夫は狼狽し、喉を鳴らしながら歩ずさる。
「受付で聞いてきたわ。点滴で落ち着いているそうね。命に別状がなくて本当によかったわ」
「あ、ああ……そうなんだよ。さっき容態が急に定してな……」
「それで、百万円の請求はどこ?」
「え?」
「病院からの正式な概算よ。今すぐ窓で支払うから、類を渡してちょうだい」
夫は線を激しく泳がせ、脂汗の浮かぶ額を拭った。横につ義弟の健太は、気まずそうに顔を伏せて言も発しない。
「だ、だからそれはでいいって言っただろ。もう急な術はなくなったんだから」
「誤魔化さないで。検査と点滴だけで百万円なんて数字がるはずがないわ」
私は契約管理の仕事で培った識を盾に、夫の逃げを静に塞いだ。額療養費制度を使えば窓負担は限られている、そんな鱈目が通るはずがない。
「私の母の万円には正気じゃないと鳴ったあなたが、なぜ百万円もの現を求したの?」
「おは医者でもないくせにったようなを――」
「公平、答えなさい。その百万円、本当は何に使うつもりだったの」
私の鋭い詰問に、夫は観したようにを抱えて呻いた。そして持っていたビジネスバッグから、震えるで冊のパンフレットを引きずりした。
「……母さんのためなんだよ」
「何のため?」
「齢者向けの、ケア付き宅だよ……!」
表には級ホテルのような内装が印刷されていた。『入居:百万円』の文字のに、夫の自で署名された申込が挟まれている。義母の急病をダシにして、夫は母親の贅沢なみ替え費用を奪おうとしていたのだ。
病へ移すると、点滴を終えた義母はベッドので悠然とを起こしていた。私を見るなり、満と優越が入り混じった笑みを元に浮かべる。
「美咲さん、公平から聞いたでしょう。私、あのアリアコートに入居することになったのよ」
「お義母さん、体調が戻られて何よりです。ところで費用はご自の預か、ご自宅を売却して面されるのですか?」
私の事務な問いかけに、義母の表が変した。だと言わんばかりに目を剥き、声を荒らげる。
「自宅を売るですって? とんでもない、川の切な財産をに渡すわけにいかないでしょう」
「では、の百万円はお義母さんの預からされるのですね?」
「男夫婦が親の老の面倒を見るのは当然でしょう。あんたたち夫婦は子供もいないんだから、百万くらいポンとせるはずよ」
義母は悪びれる様子もなく平然と言い放った。自分のおとは温したまま級な老を享受し、その原資は息子の嫁にさせればいいと信じ込んでいるのだ。
「私が施設に入れば、実のとはいずれあんたたちに相続させるんだから。