"夫の親孝行は、私の持ち家でした" 第14話
額に脂汗を浮かべ、すがるような目で私を見げてくる。
「ま、真由美……頼む、で……でゆっくり話そう。俺が悪かった、全部俺が浅はかだったんだ……!」
「いいえ。で話すことなど、もう何ひとつありません」
私はバッグのファスナーを閉め、然と言い放った。
「央産への拒絶通は完しています。あのは、私のです。歩たりとも、あなた方のい通りにはさせません」
「真由美さん!」
子が畳にをついたまま、怨嗟の声をげた。
「私を追いす気かい!? 男の嫁のくせに、姑をに迷わせる気!?」
「お義母様には、ご自名義の持ちがまだ元に残っているはずです。お体も健康で、の回りのこともすべてご自分でできる。引き取る理由など、最初からどこにもありませんでした」
私は義母のれっぽい演技を、ミリ単位のも交えずに切り捨てた。
「来週の曜までに、私のに持ち込んだお荷物をすべて引き払ってください。期を過ぎたものは、産業廃棄物として業者に処分を委託します。費用は修さんに請求しますので」
「な……っ!?」
子は絶句し、胸を押さえて倒れ込んだ。
だが、その茶番に付きう気は毛ない。
「浩さん、美智子さん。アパートの違約や次のまいの相談なら、そこに転がっている『派な男』とでなさってください。
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私の資産からるおは、円もありません」
「お、お義姉さん……!」
青ざめる弟夫婦の声を背に受けながら、私はのので本の叔父に向き直った。
く、完璧な角度で礼する。
「叔父様、皆様。本はこのようなお見苦しい席となってしまい、変申し訳ございませんでした。私はこれにて失礼いたします」
「……真由美さん。すまなかったね。苦労をかけた」
叔父の々しい会釈を図に、私は踵を返した。
引き戸をけ、個をる。
背から、「真由美! 待ってくれ! かないでくれ!」という修の無様な叫び声と、弟夫婦の罵声、子の泣き喚く声がなりって追いかけてきた。
だが、私は度も振り返らなかった。
料亭をると、晩の澄み切ったが頬を打った。
きく息を吸い込むと、肺の奥まで涼な空気が満ちていく。
指先ひとつ震えていない。
の結婚活という名の荷を、ようやく脱ぎ捨てたのだと実した。
そので、私はあらかじめ配していた鍵の交換業者へと向かった。
親族会が終わってからが経過した午。
自宅の玄関ドアので、専業者の作業を見守る。
シリンダーがされ、最の防犯ディンプルキーが取り付けられた。
「はい、奥様。これでしい鍵以では、絶対にきません」
渡された本の真しい属の鍵。
たく、いその触を握りしめた瞬、私のは完全に奪還された。
続いて、リビングのデスクに向かい、あらかじめきを済ませていた文を仕げる。
依頼していた弁護士の事務所へ連絡を入れ、子署名を完させた。
翌週の曜の朝番で、修の会社宛てに届くように配した内容証郵便。
内容は極めてシンプルだ。
、婚姻関係の破綻に基づく即別居の通告。
、無断での財産処分未遂を理由とする婚協議の申し入れ。
、特財産である現自宅からの退請、ならびにち入り禁止の通。
、財産分与における婚特財産の完全除。
事務処理を終えた午過ぎ。
けたたましく玄関のドアノブがガチャガチャと揺れいた。
「おい! 真由美! けろ! なんで鍵が入らないんだよ!」
ドアを激しく叩く音。
修の声だった。
続いて、インターホンのモニターが連打される。
私は画面の通話ボタンを押した。
スピーカー越しに、徹な声を送り込む。
「修さん。鍵は交換しました」
画面のの夫は、ネクタイを緩め、髪を振り乱して取り乱していた。
「な、何考えてんだよ! ここは俺のでもあるだろ! 締めすなんて違法だぞ!」
「違法なのは、妻の財産を勝に売りばそうとしたあなたの為です」
私の抑揚のない声に、夫の声がピタリと止まった。
「あなたの私物は、スーツケースつにまとめて玄関脇の物置に入れてあります。今夜泊まる所なら、駅のビジネスホテルでもお探しなさい」