"夫の親孝行は、私の持ち家でした" 第11話
すべて、男である私が責任を持って背負う覚悟です!」
「素らしい!」
本の叔父が膝を打ち、座敷全体に割れんばかりの拍が鳴り響いた。
子はハンカチを目元に当て、極まったように肩を震わせている。
浩と美智子は、まるで宝くじに当たったかのように顔を見わせ、満面の笑みで拍を送っていた。
誰もが、男・修の「圧倒な甲斐性」と「美しき自己犠牲」に酔い痴れていた。
親族という名の閉鎖空がみす、完璧な同調圧力。
この空気に包まれれば、どんなでも異論を挟むことなどできないと、夫は確信していたに違いない。
拍の波が、ゆっくりと引き始めたそのだった。
「素らしいお話ですね」
座敷の空気を切り裂くように、澄んだ、静かな声が響いた。
座の末席から、私がゆっくりとちがった。
線が斉に私へと注がれる。
子が眉をひそめ、修は怪訝そうに目を細めた。
「真由美? なんだ、おも男の嫁として言挨拶するか?」
修が嫌のまま、寛な夫を演じるようにを差し伸べてくる。
私はそのを完全に無し、座卓の横を歩いて、夫の正面へとみた。
「ひとつだけ、事実を確認させてください」
私は修の目をまっすぐに見つめた。
声のトーンは、業務連絡を読みげるのように平坦で、たい。
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「その千百万円の築マンション。体、何のおで購入されるご予定なんですか?」
座敷の空気が、かすかに揺らいだ。
親戚たちが怪訝そうに顔を見わせる。
修は瞬だけ籠もり、すぐに取り繕うように笑った。
「な、なんだよ急に。資計画なら、このおにも見せただろ。を入れて、残りは俺がの宅ローンを組むんだよ」
「ええ、そのについてお聞きしているんです」
私は歩、夫へと歩み寄った。
「として計されている千百万円。そのおは、どこからてくるのですか?」
修の額に、微かに脂汗が滲んだ。
親戚たちの線が集まるで、夫は誤魔化すように声を張りげた。
「そりゃあ、今のを売却した資に決まってるだろ! 自宅を売却して現化し、それを全額居のに充てる! ごく般なみ替えの法だ!」
「そうですか」
私はさく頷いた。
そして、座敷全体に響き渡る声で、次の問いを投げかけた。
「では、修さん。その『今の自宅』は、体誰のものですか?」
空気が完全に凍りついた。
修の呼吸が止まり、元が引きつる。
耐えかねたように、座から子が鋭い声をげた。
「真由美さん! 親戚の皆様ので、何をみっともない言いがかりをつけてるの!?」
子はちがり、着物の袂を揺らしながら私を指弾した。
「今のが誰のものかって、夫婦のに決まってるでしょうが! 夫婦でんできたなんだから、の財産よ! それを男の修が族のためにかそうとしてるのに、何をごちゃごちゃとし渋ってるの!」
親戚の叔母たちも、同調するようにを揃える。
「そうよ、真由美さん。族みんなの幸せのためなんだから」
「修くんがきなローンを背負ってくれるんだから、あなたも協力しなきゃ」
押し寄せる同調圧力の波。
昔ながらの「嫁の分際」をいる無言の暴力。
私はそのすべてを、徹な線ひとつで薙ぎ払った。
「いいえ。あのは、夫婦の財産ではありません」
私は提げバッグから、青いクリアファイルを取りした。
留め具をし、から枚の類を引き抜く。
「あのと建物は、私が結婚するに、代の独代に自分の与と貯蓄だけで購入し、代半で完済した、私固の単独財産です」
バサリ、と。
みのある公文が、座卓の央、本の叔父の目のに滑り落ちた。
親戚たちが息を呑み、を乗りしてその類を覗き込む。
「こ、これは……登記事項証原本……?」
本の叔父が鏡を掛け直し、震える指で類をなぞった。
「権利部、甲区……所者、真由美。……共名義ではないな。抵当権も設定されていない。全額完済された、真由美さんの単独所だ……」
座敷が、を打ったように静まり返った。
親戚たちの顔から、先ほどまでの賞賛のがサーッと引いていく。
「な、何をしてるんだ、真由美!」