"花嫁が逃げた祝言で、毒を盛られた若旦那が選んだ女中" 第17話
「やはりそうだったのか。の淵にあって識が朦朧としていた俺の目にも、おがまとっていた気く美しい佇まいははっきりと見えていた。おがただ者ではないとっていたからこそ、俺はあのに迷わずおのを握ったのだ」
まさにその、お染の父親の呼び名を聞いた宇兵が、はっと何かをいしたように目を見き、震える声でをいた。
「お嬢様、今、父のお名をそのようにおっしゃいましたか。あの伝説の名医の先のことでございますか!」
お染が静かに頷くと、宇兵は込みげるを抑えきれない様子で言葉を続けた。
「なんということだ、の配剤とはまさにこのことでございますか。若旦様、実は当とそのお医者様のご実とのには、い因縁がございます。い昔、先代の旦様が原因の病を患われ、戸の名医がを尽くしても治らなかった際、い領国からを運んで命を救ってくださったのが、お染様の父であられたのです!」
お染が懐から切に守ってきたさな布の袋を取りし、き父がにき残した褪せた薬の処方箋を広げると、宇兵はその文字を見るなり涙を流した。
「違いありません。先代様の命を救ったあのの処方箋と、全く同じ跡でございます!」
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かつてお染の父親が源の先代の命を救っての続を助け、を超えてその娘であるお染が源の命を救いしたという奇跡の因縁に、源とお染はく胸を打たれた。
さらに、お染の肩にある系の血筋を証する2つの対になった痣と、父の処方箋というかぬ証拠を携え、源はすぐさま代官所へ赴いてお染の父の無実と名の名誉回復を願いた。
幸いなことに、かつてお染の父親を罠に嵌めた悪徳役はすでに失脚しており、おはお染の父親の無実を認めて、そのにかかっていた罪を完全にいだのである。
これにより逆賊の娘という汚名をいだお染が、台所の煤を落とし、仕ての良い見事な袖をにまとうと、その姿はのようにく凛として端正だった。
「まさか、あの台所で黙々と働いていた娘が、これほど品なお嬢様であったとは。眉は墨で描いたように美しく、やはり本物の名の令嬢というのはち振るいからして全く違うものだな」
所の々がその見違えるような美しい姿に嘆する、源はお染のを優しく握りしめ、真摯な差しで語りかけた。
「お染、おは周囲の惑に流され、急しのぎで私の祝言の相となった。しかし、今度は私からからの願いとしておに請う。分やこれまでの数奇なのなどは関係ない。
私と本当の夫婦の契りを結んでくれないだろうか。私の命を救ってくれたおを、涯そばで切に守り続けたいのだ」
この2、たった1で耐え忍んできた孤独と恐怖が、源の温かい言葉によっての解けのように溶けり、お染の目から粒の涙が静かに溢れ落ちた。お染はく何度も首を縦に振った。
「未熟な私ですが、んで若旦様のお傍に仕えさせていただきます」
こうして2は名実ともに真の夫婦となった。形ばかりの祝言から始まった縁が、が結んだ本物の尊い契りへとまれ変わり、敷には再びるい笑顔と活気が戻ってきた。
源は当主として名を見事に再興し、お染は派な奥方としてい慈を持って敷の者たちをまとめ、忠義者の宇兵は仲睦まじく寄り添う2の姿をから満げに見守った。
は流れ、2のには子宝も授かり、円満で温かい庭を築いていったお染は父から受け継いだ医術を活かして領内のたちの病や怪を献に診て回り、貧しく薬代も払えない々からは決してを受け取ろうとはしなかったため、々からい尊敬を集めた。
真実というものは、先から発せられる言葉ではなく、相を見つめる目と静かに傾けられるからまれる。
の真の価値はまれ持った分のさではなく、その胸の内にあるの清らかさにこそあるのだと、2の物語は世までく語り継がれていった。