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"花嫁が逃げた祝言で、毒を盛られた若旦那が選んだ女中" 第14話

お染はを垂れて面を見つめながら、絶望の淵にたされていた。ここで声をげて弁すれば、これまで守り通してきたのきけぬふりが嘘だと見し、逆賊である罪の娘だと暴かれて打ち首になる。かといってを閉ざしたままでいれば、当主暗殺の首謀者として処刑される。

のきけぬ女であれば自分の言葉で弁などできまいとを括った庄兵の命令で、権蔵が躍りてお染の細い首を荒縄で無残に縛りげた。お染の瞳から悔しさと無の涙がぽろぽろと面にこぼれ落ちた。

まさにその、敷の奥から庭の空気を瞬にして凍りつかせるほど威厳に満ちた声が響き渡った。

「これ、控えよ!」

昨までに伏せっていたはずの当主・源が、誰の支えもなしに背筋を真っ直ぐに伸ばし、威堂々と自らので庭へと姿を現したのである。

親族や奉公たちは幽霊でも見たかのように驚愕の声をげ、庄兵の顔からは気に血の気が引いた。

「若旦……お、体なぜそのような体で起きてこられたのだ」

狼狽する庄兵を鋭いで見据え、源は堂々たる声で告げた。

「叔父、お染には何の罪もございません。お染は夜な夜な私の薬に毒が盛られているのを見抜き、命がけでそれを防ぎながら私をき永らえさせてくれた恩にございます。

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私に本当に毒を盛っていたのは、全く別の者にございます」

庭にざわめきが広がったが、百戦錬磨の庄兵はすぐに平然を装い、逆に声を荒らげて居直った。

「若旦、病のせいでまだおがの空のようでございますな。その卑しい女が怪しげな術でもかけて惑わしているに違いありません。者ども、若旦は病の毒ででも見ておられるのだ。その届き者を刻もくお代官所へ引ってていけ!」

決定な物証がまだそのになかったため、奉公たちは本の鎮である庄兵の権威に押され、形勢は再び庄兵の方へと傾き始めた。

その瞬、ろから宇兵が震える声を振り絞ってみた。

「克に見ておりました!叔父のである権蔵が、夜な夜な若旦様の薬に毒を忍ばせているのを、私は障子の隙からこの目でしっかりと見届けたのでございます。お染が毒を盛ったのではありません、毒を盛ったのは権蔵にございます。そしてその権蔵を裏で操っていた黒幕は、庄兵様、あなた様でございます!」

宇兵の皺だらけの指が真っ直ぐに庄兵を指差し、庭は蜂の巣をつついたような騒ぎとなった。しかし庄兵はでせせら笑った。

「ふん、老いぼれの奉公が何を血迷った妄言を吐くかとえば、その飯炊き女と裏でを結び、私を陥れようと企んだな。

証拠をせ、証拠を!奉公が主を無実の罪で告発することがどれほどいか、その老いぼれも緒に縛りげて代官所へ連れていけ!」

当の理尽な分制度の壁を盾にした庄兵の号に、奉公たちは逆らうことができず、宇兵の両も荒縄で縛りげられた。

お染が集めた証拠は隠されたままで、両を縛られた体では取りすことも、をかずに所を伝えることもできない。権蔵がお染と宇兵の体を力任せに引っ張っていこうとしたその瞬、源はついにそのの面に両膝をついた。

「叔父、どうかお願いでございます。お染の命だけは助けてやってください。お染には何の罪もございません。どうしてもというならば、代わりにこの私をいかようにも罰してください!」

格式い柄の当主である源が、自分のために面に膝をつき、涙を流して懇願している。その痛々しい姿に、お染の胸は千々に引き裂かれるいだった。

を救うのは真であるという宇兵の言葉と、真実を見極める目とから誠の言葉がまれるというき父の教えが蘇り、お染はついに覚悟を決めた。たとえ己の正体が暴かれて命を落とすことになろうとも、2守り続けてきた沈黙の壁を打ち破って真実を叫ぼうと、縛られた体を必によじって裏庭の方向へ首を振った。

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