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"花嫁が逃げた祝言で、毒を盛られた若旦那が選んだ女中" 第10話

「お染よ、こうしておと並んで静かに座っていると、議なほどに私のがらぐのだ。これまで言の言葉も交わしたことがないというのに、おが隣にいてくれるだけで、全てのことが通じっているような満ちりたになる」

お染はく俯いたまま頬をほんのりと赤らめた。源は縁側のすぐそばに咲いていたさな黄の野をそっと折り、お染の元へと差しした。

お染がそのを受け取って胸をくしていると、源はい目をして自らの過を語り始めた。

「私がまだ幼く両親がきていた頃、このお敷は本当に温かいに満ちていた。厳格だが慈い父と、いつも優しい笑顔で抱きしめてくれた母。だが、突然の流り病でお2が1度に私を置いて逝ってしまわれてからは、この広すぎるお敷が空っぽの伽になってしまったようにじられたのだ」

源の声には、誰にも癒やされることのなかったい孤独が滲んでいた。

「当主という責が幼い肩にのしかかり、誰にも音を吐けず1で名を守らねばならぬ孤独は、私のを蝕んだ。そこへあの原因の病に伏せり、いっそこのまま病にを任せて全てを投げしてしまいたいとさえ願ったのだ。だが、おが私のを掴んで引き戻し、枯れ果てていた私のまで救いしてくれたのだな」

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お染はその言葉を聞き、胸が締めつけられるような痛みを覚えた。共に最の両親を理尽に失い、涯孤独のとなって世の荒波を1で耐え抜いてきた同じ傷が、2のの距をく結びつけていった。

それをから見守っていた宇兵は、ある、お染の元でそっと囁いた。

「お染よ、若旦様がおをから切にっておられるのがわしにはよくわかるぞ。おに過どんな過酷な事があろうとも、若旦様のお傍であればきっと幸せを掴むことができるはずだ」

お染は顔を赤らめたが、同に胸の奥は鉛を詰め込まれたようにく苦しかった。自分はおから追われる罪の娘であり、もし正体が世に見すれば、源にまで過酷な咎めが及ぶのではないかという恐れが消えなかったからだ。

そんなある、源が庭を歩いていた際、まだ完全に毒が抜けきっていなかったせいで激しいめまいに襲われ、よろりと元を崩した。

くにいたお染は息をのんで駆け寄り、とっさに細い腕で源の体を支えた。源がお染の肩に寄りかかって均衡を保った瞬、2の線が至距でなりった。

その拍子に、お染がいつも顔を隠していた綿の拭いがするりと肩へ滑り落ち、どこまでも澄んだ気品溢れる美しい瞳が源の目のにわになった。

源はその瞳を見つめたまま息をのみ、しばらくき1つできなかった。

「お染よ……」

源が微かな声で名を呼ぶと、お染はに返って慌てて拭いをく被り直し、面へと線を落として平伏した。源は何かを言葉にしようと唇をかしたが、それを静かにみ込み、ただお染の震えるさなを優しく握りしめた。

そのの夜、お染が暗い台所で1物いに沈んでいると、宇兵が静かにづいてきた。お染はくにあった薪の燃え殻を拾い、の隅に文字をき記した。

『私のこのような卑しいのでは、若旦様には到底釣りいません。おにを塗るになるだけでございます』

宇兵はその黒い文字を見つめると、く首を横に振った。

「お染よ、滅相もないことを申すな。の真の価値や器というものは、おの定めた分や格付けなどで決まるものではない。この老い先いが世をかけてお敷に仕え、ようやく悟ったことが1つある。を真にかすのは価な薬などではなく、がをういの力なのだ。その美しいを決して恥じてはならん」

を救うのは薬ではなくであるというみのある言が、お染の傷ついたにく刻み込まれた。

方、源もお染への断ち切れぬいゆえに眠れぬ夜を過ごしていた。

無駄のない洗練されたち振るいや薬を煎じる見事な際、そして性に満ちた瞳から、お染がただの女ではないことを肌でじ取っていたのだ。

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