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"花嫁が逃げた祝言で、毒を盛られた若旦那が選んだ女中" 第9話

「お染よ、若旦様の命を繋ぎ止めるだけでは根本な解決にはならぬ。庄兵様の犯した罪をのに晒さねば、あのお方はどんな汚いを使ってでも最には息の根を止めようとするはずだ」

お染もに文字をいて頷いた。

『その通りです。証拠を集めねばなりません。盛られている毒をに入れ、権蔵が薬に毒を混入させる決定な現を押さえるのです』

2は慎に計画を練りげた。お染は毎夜すり替える薬からしずつ毒の成分を抽して証拠として溜め、宇兵は庄兵と権蔵の向を監し、源の体が完全に回復した瞬に告発することにした。

その夜、お染は傍らで眠る夫の血が戻った穏やかな横顔を見つめ、い忘れていた微かな微笑みを唇の端に浮かべた。

それから数、敷を揺るがす来事が起きた。2ヶには今にも息が絶えそうだった源が、誰の肩も借りず、1本の杖さえつかずに自らので庭へと歩きしたのである。

「若旦様がお歩きになられたぞ!若旦様がお病気からちがられた!」

に詰めていた奉公たちがこぞって庭へ駆けつけ、初の陽を浴びて佇む源の姿に歓声をげて涙を流した。宇兵も歓の涙を拭うのさえ忘れて肩を震わせていた。

しかし、奥座敷の斎でそのらせを受け取った庄兵は、顔面をに変えて唇を震わせた。

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に持っていた価な茶碗がきな音をてて揺れ、畳のへ茶がこぼれ落ちた。

「馬鹿な、そんなはずはない。確かにあの致量の猛毒を毎夜欠かさずませていたというのに、なぜあいつがきて歩いているのだ」

このまま源が完全に健康な体を取り戻せば、当主の座も広な敷も、何千両という莫な産も全てが自分のから永にすり抜けていく。庄兵は血が滲むほど奥歯を噛みしめ、形相を変えて権蔵を密へと呼び寄せた。

「もはや悠な真似はしていられん。毒をしずつ盛って病に見せかけるなどというぬるい方法では埒がかぬ。今度は1滴で確実に臓を止めることができる、速効性のい極の猛毒を使うのだ」

その言葉に、さすがの権蔵もぎくりとしてをすくめた。

「旦様、それはあまりにも無茶でございます。それほどい毒を気に使えば、誰の目から見ても自然な毒殺だとわかってしまいます。万がにもおに嗅ぎつけられでもしたら、私たちの首がびます」

「だからこそ、その鈍いを使うのだ」

庄兵は蛇のように険な笑みを浮かべた。

「毒を使って源を殺しつつ、その全ての罪を全く別の者にすりつければ済むことではないか。例えば、あの素性のれぬ、のきけぬれな台所女のようにな」

権蔵は驚愕のあまり目を丸くした。源を劇薬で毒殺し、その罪をお染1に着せて代官所に処刑させれば、庄兵は切を汚すことなく劇の叔父として全ての財産を相続できる。

「あのような言葉も発せぬ格好の代わり形が、にどこに転がっているというのだ」

庄兵はを叩いて己の悪恵に酔いしれた。お染が命がけで夫を救いしたが、皮肉にも2を最の危へと追い込む引きとなってしまったのである。

その頃、源の回復ぶりはを追うごとに目覚ましく、毎朝夕に庭を散歩できるほどになっていた。血が蘇った顔ちには本来の貴で端正な美しさが満ち、自分の命を繋ぎ止めてくれたお染に対してい謝とを抱くようになっていた。

あるよくれたの、源が庭に面した縁側に腰かけていると、お染が丁寧に煎じた温かい葛湯をお盆に乗せてづいてきた。

源はお染の姿を見つけると無邪気な微笑みを浮かべ、自分が座っているすぐ隣の板のをぽんぽんとで優しく叩いた。ここに座りなさいというである。

お染は分の違いを気にして躊躇したが、源の優しい差しに促され、おずおずと隣へ腰をろした。源は葛湯を啜ると、お染の横顔をおしそうに見つめ、静かにをいた。

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