みかん小説
本棚

"サンダル履きの妻を、夫が売る日" 第21話

につけているのは、履き古したフラットなサンダルに、洗いざらしの綿パンツ。

には、し毛羽ったのセーターを羽織っている。

ろで束ねた髪に、いリップクリームだけを引いた顔。

誰に見せるためでもない、私が番呼吸しやすい、休の私の姿。

カツン、カツンとヒールを鳴らす見栄の鎧など、最初から私には必なかったのだ。

歩いて数分の、裏へ入る。

古びた造の建物のにち、使い古された引き戸にをかけた。

ガラガラ、と気のいい音が鳴る。

煮干しと鰹節の、温かく湿った汁のりが、えた先を優しく包み込んだ。

「いらっしゃい――おや、真紀ちゃん」

厨の奥から、い割烹着姿の主が、いつもの穏やかな笑顔を向けてくる。

カウンターの奥には、昼から瓶ビールを傾ける所の老が。

相席を気にする必もない、いつもの狭い内。

「お疲れさん。今も仕事帰りかい?」

「ええ、しだけ確認があって」

私は窓際の、あのさな掛けのパイプ子の席へ腰をろした。

向かいの席には、もう誰も座っていない。

遜な態度で貧乏くさいと嘲笑う女も、

息子の嫁の褌で相撲を取ろうとした欲な老も、

妻の労働に寄しながら威張り散らしていた愚かな男も。

私の界の先には、拭き清められた目のテーブルと、窓のを流れる穏やかなのがあるだけだった。

「いつものきつねうどんでいいかい?」

厨から主の声がぶ。

私はく息を吸い込み、守り抜いてきた自分の元を確かめるように、静かに微笑んだ。

「はい。お願いします」

運ばれてきた丼からちる真っな湯気を眺めながら、私は元の割り箸を、パチンと気よく割った。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: