"サンダル履きの妻を、夫が売る日" 第8話
理の顔から、瞬で余裕の笑みが消え失せた。
眉にい皺が刻まれ、鋭い声がフロアに響き渡る。
「……は? あなた、自分が誰に答えしているか分かっているの? 岸本部の指示よ! 組織を円滑に回すための引き継ぎを拒否するなんて、業務命令違反で懲戒ものよ!」
「では、確認いたしましょう」
私は静かにちがった。
子の引く音すらてない、極めて滑らかな作。
「ちょうど今、第会議を抑えてあります。岸本部にもお越しいただいています。あなたがが社のマネジメントとして適格であるか、そしてその権限移譲が正当であるか、業務説のを設けました」
「な……業務説?」
理が狼狽え、目を泳がせる。
「そんなの聞いてないわよ! 私は京で――」
「京でのご実績を、ぜひ現の私たちにもご教授いただきたいのです。どうぞ、こちらへ」
私が会議の扉をけ放つと、奥にはすでに、苦虫を噛み潰したような顔の岸本部が座っていた。
そしてその隣には、法務の川が、無表にノートパソコンをいて待している。
理は瞬、を止めてずさりしかけた。
だが、フロアの線が集まっている、逃げすこともできない。
彼女は忌々しそうに舌打ちをすると、肩をらせて会議へとを踏み入れた。
い防音扉が、背で音もなく閉ざされる。
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「藤原くん、何の真似だ!」
座るなり、岸本部が机を叩いて声を荒らげた。
「さんの能力は私が保証している! それをわざわざこんな席を設けて、任のを引っ張るような真似をして何になる! くだらない確認など回しにして、即座に顧客アカウントを引き渡せばいいんだ!」
岸本の声に対し、川が静かにを挟んだ。
「岸本部。が社の基幹システムにおける顧客データの示には、業務適性の審査が義務付けられています。法務のち会いのもと、形式な確認をうだけです。さんが優秀なマネジメントであれば、分で終わる話ですよ」
川の徹な言に、岸本は言葉を詰まらせ、喉を鳴らした。
私はテーブルの央へ、冊のいファイルを置いた。
表には『物流緊急対応およびリスク管理基準』と印字されている。
「さん。あなたが提された職務経歴には、『規模物流における統括マネジメントの経験数』と記載されていましたね」
理は顎をげ、虚勢を張るように胸を張った。
「当たりよ。何億という流通案件をかしてきたわ。あなたたち方の零細が扱う規模とは桁が違うの」
「結構です。では、現の実務について点だけ、具体な判断基準をお聞かせください」
私は元の資料をいた。
「来予定されている、スーパーチェーン向けの特産品フェア。納品期のに、産の記録豪により幹線が寸断され、契約凍の配がショートしたとします。スーパー側からは『欠品は切認めない。違約を請求する』とに通告されている。この、あなたが統括責任者なら、第報を受けてまず何を指示しますか?」
理はで笑った。
「そんなの簡単よ。京のビジネスでは顧客第が鉄則なの。まずは顧客の元へんでいって、『必ずにわせます、お任せください』とをげて信頼を繋ぎ止めるわ。そので、現の物流部隊にハッパをかけて、どんなを使ってでもトラックをらせる。それだけよ」
沈黙が落ちた。
川の元で、カタカタとキーボードを叩く音だけが響く。
岸本部の額に、じわりと嫌な汗が滲みしていた。
私は元のページを枚めくり、プロジェクターの画面に契約の抜粋を映しした。
「落第ですね」
「……はあ!?」
理がちがり、甲い声を張りげた。
「何が落第よ! 顧客の求を呑むのが営業の基本でしょうが!」
「が社とスーパーとの基本契約第条第3項。災変等による抗力が発した、以内の面通をもってペナルティの免責協議に入ると規定されています」
私の声は、氷のように滑らかで、切の揺らぎがなかった。
「現の庫と代替ルートの積載量を確認せず、で『必ずにわせます』と請け負った瞬、抗力の抗弁権は消滅し、全責任がが社側の債務履に切り替わります。