"サンダル履きの妻を、夫が売る日" 第7話
私は震えることもなく、徹なつきでそのメールを全文印刷した。
ヘッダー報、送信元IPアドレス、CCに含まれる部ドメインの登記報。
プリンターから吐きされるをに取り、私はクリアファイルに滑り込ませた。
計の針は午分。
理が指定した期限まで、あと分。
私は内線話の受話器を取り、法務・コンプライアンスの直通番号を迷いなくプッシュした。
「お疲れ様です、業務調の藤原です。社秘報の正取得求、およびな利益相反の疑いについて、緊急の内部通報をいたいのですが――今、おはよろしいでしょうか」
狩りのは、始まったばかりだった。
法務・コンプライアンスの扉をノックした、私の呼吸は完全にっていた。
迎えてくれたのは、の川だった。
代半ばの、滅にを表にさない元検察官の法務責任者だ。
デスクのに置かれたパソコンの画面から線をげ、私の張り詰めた空気をじ取ったのか、さく鏡の縁を押しげた。
「藤原主任。現のであるあなたが、直接ここへ来るのは珍しいですね。何がありましたか」
私は何も言わず、持参したクリアファイルを川のに差しした。
先ほど印刷したばかりの、理からのメール。
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ヘッダー報、送信元のフリーアドレス、そして【CC】に入っているつの宛先。
川の目が、類を追うごとに細くなっていく。
「……社秘データの求ですか。主取引先社の原価表と取引台帳式。これはが社の営業秘密そのものです」
「ええ。求してきたのは、本岸本部がフロアに連れてきた『理』という物です」
「彼女はまだ、事部での元照会すら完していない部の候補者にすぎませんよ。なぜそんなが、業務指示をせるのですか」
「岸本部がで実務権限を与えたと主張しています。ですが、問題はそこだけではありません」
私は指先で、CCの欄にある部ドメインを指し示した。
「このアドレスです。『[email protected]』。登記報を照会したところ、私の夫である藤原健太が代表を務める個事業主のコンサルティング号でした。登録所は、私の自宅です」
川の眉が、鋭くねがった。
「夫君……? なぜ営業部と部の応募者が、社員の配偶者の事業用アドレスをCCに入れて社秘を求してくるのです?」
「夫は、岸本部と商会議所を通じて私な繋がりを持っています。そして理は、夫の母親――私の義母のの娘です」
乾いた気が、会議の空気を満たしていく。
川は子にく背を預け、腕を組んだ。
「なるほど。構図が見えましたね。
岸本部による独断の越権、社秘の部漏洩未遂、そして極めて悪質な利益相反の疑いがある」
「までにデータを渡さなければ、組織再編の妨害として処理すると脅されています」
「渡す必はありません」
川は即座に言い切った。
「この件は法務が預かります。ただし、今すぐ岸本部を問い詰めれば『違いだった』『のあまり先った』と言い逃れされる能性がい。藤原主任、あなたにいてもらいたいことがあります」
「分かっています」
私はさく頷いた。
「相は私が何もらない、ただの怯えたベテランだとい込んでいます。その油断を利用して、言い逃れのできない所へ引きずりします」
川の元に、微かな笑みが浮かんだ。
「頼もしいですね。法務のオブザーバーとして、私もろから記録を取らせてもらいます」
午分。
理が指定した「期限」の分。
オフィスの静寂を破るように、カツン、カツンといヒールの音が私のデスクへとづいてきた。
顔をげると、腕を組み、ややかな見すような線を投げる理がっていた。
「藤原さん。約束のよ。クラウドへのアップロード通が届かないのだけれど、まさか忘れていたわけじゃないわよね?」
フロアの社員たちが、何事かと息を呑んでこちらを見ている。
輩の森田がちがりかけたのを、私は元で制した。
「さん。先ほど申しげた通り、社内規定、権限の承認がない部の方へ顧客データをお渡しすることはできません」