"サンダル履きの妻を、夫が売る日" 第6話
ソファーので、理が勝ち誇ったように角を持ちげた。
『言った通りでしょう?』とでも言いたげな、底の悪い線が私を射抜く。
私は表を切崩さず、岸本部の目をまっすぐに見つめ返した。
「確認させていただけますか。それは、社内規定に基づく正式な業務命令でしょうか」
岸本はわずかに揺を見せたが、すぐに苛ちを隠すように語気をめた。
「当たりだ! 私が営業部として判断しているんだ。若い優秀な材にチャンスを与え、会社をにめる。君のようなベテランが、つまらない縄張り識でを引っ張ってどうするんだね。文句を言わずに、顧客台帳と契約履歴のデータを今にまとめなさい」
「承いたしました」
私は静かにをげた。
「ただし、報セキュリティおよび顧客コンプライアンス規程第条に基づき、正式な引き継ぎには事部による発令通と、システムの権限委譲承認が必となります。その続きが完次第、速やかに対応いたします」
岸本の顔が瞬、引きつった。
「なっ……続きなどからどうとでもなる! まずは現レベルで引き継ぎを――」
「コンプライアンス違反になりますので」
私は遮るように、しかし完璧なビジネススマイルを浮かべて言った。
「顧客の契約報漏洩は、部ご自の査定にも関わります。
広告
慎を期すべきかとじます」
そう言い残し、私は礼してデスクへと戻った。
背で、岸本が舌打ちする音と、理がそうにソファーを軋ませる気配がはっきりと伝わってきた。
自席に戻ると、隣の森田が震える声で囁いてきた。
「主任、丈夫ですか……? 岸本部、完全にあのの言いなりじゃないですか」
「丈夫よ、森田さん。仕事に戻りましょう」
私はキーボードにを置き、社内メールの受信ボックスをいた。
午。
事部の掲示板には、依然として理の入社発令は掲載されていない。
当たりだ。まだ内定すらしていないを、事部が認めるはずがない。
奴らは、既成事実を作ろうとしているのだ。
私から顧客データと取引条件のデータを奪し、「理の主導で引き継ぎが完した」という実績をでっちげ、事承諾で経営陣に認めさせる。
夫と義母のシナリオ通りに。
午。
私のメーラーが、着メールの着信を告げた。
送信者:理(部フリーメールアドレス)
件名:【至急】主顧客引継ぎのお願い
社内アカウントすら発されていない女が、私用のフリーメールから堂々と業務指示を送りつけてきたのだ。
メールをく。
『藤原真紀様
先ほど岸本部より指示があった通り、以の主取引先に関する全データの即示を求します。
・株式会社マルエー物産(取引額、仕入れ原価表、担当者直通連絡先)
・信州特産品流通協同組(ギフト用枠の配分基準、マージン率)
・、主社の取引台帳式
本までに、指定のクラウドフォルダへアップロードしてください。
なお、本メールは関係各位へ共済みです。円滑な組織再編のため、速やかな対応を求めます。
理』
添付ファイルには、私がかけて作りげた取引先ごとの「リスク管理シート」のフォーマットが、そのまま貼り付けられていた。
そして、私の線は、そのメールの【CC】の欄に釘付けになった。
岸本部の社内アドレス。
そして、もうつの見らぬ部アドレス。
――健太コンサルティング・パートナーズ。
指先が、スッとたくなる。
体の血が、逆流するような覚。
健太。
あなたの「副業」の号ね。
夫の会社の名が、なぜ、入社の女が求するが社の極秘顧客データの送信先に、当たりのように入っているのか。
私はマウスを操作し、そのアドレスのドメイン報を即座に照会した。
登録者名:藤原健太。
登録所:私の自宅。
点と点が、本の太い線となって繋がった。
これは単なる、いがった女のポジション奪いではない。
私の顧客を奪い、私の実績を塗り替え、
その裏で、夫のペーパーカンパニーを経由して、会社のを吸いげるパイプを作ろうとしている。
「……そこまで腐っていたのね、あなたたち」