"白いメットと二十二年の嘘" 第9話
それを誓約に記してもらいます」
「……はい……わかりました……本当に、申し訳ありませんでした……」
紗理奈はテーブルに額を擦り付けるようにして謝罪した。
その背を見つめながら、真奈美は議と、相の女性に対する憎しみが消えていくのをじていた。残ったのは、ただただい虚しさだけだった。こんな浅はかな嘘に騙される女と、そんな陳腐な嘘を平気で吐き続ける男。そのに、自分のの貴なを浪費させられていたのだとうと、りすら湧いてこなかった。
紗理奈との面談を終えた翌週、浩之は真奈美が雇った弁護士の事務所に呼びされた。
真奈美は同席せず、すべて弁護士に任した。
から弁護士から聞いた話では、浩之は最初は「妻が方にをていこうとしている」「俺は被害者だ」と主張していたらしい。だが、紗理奈側から提された「氏から『妻とは破綻している』と騙されていた」という陳述と、過の送記録、そして息子の陸からの「母の婚をく望む」という陳述を突きつけられると、完全に戦を喪失したという。
条件は以の通りに決定した。
、現の自宅(戸建て)は売却し、宅ローンを完済した残余を全額、真奈美への財産分与および慰謝料に充てること。
、解約された学費預の補填として、浩之の退職見込み額から相応分を公正証に基づいて真奈美に支払うこと。
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、浩之が乗っている型ツアラーを含む趣の物品はすべて売却し、現化して返済に充てること。
、婚届には直ちに署名・捺印すること。
の半ば、たいがるの夕方、浩之はで自宅に戻ってきた。
真奈美と陸はすでに必な荷物をまとめ、翌朝には居へ運びす準備を終えていた。
段ボール箱がく積みがったリビングは、かつて族が暮らしていた温もりを失い、がらんとして寒々しかった。
浩之はやつれ果て、スーツの肩をすぼめてち尽くしていた。このヶでキロ以痩せたのか、頬がこけ、目元には濃い隈が張り付いている。
「……真奈美」
浩之は掠れた声で呼んだ。
「類、全部サインしてきたよ。弁護士の先に渡してきた」
「そう。お疲れ様でした」
真奈美は淡々と答えた。
「バイクも……売ってきたよ。あいつ……紗理奈も、会社を辞めたらしい。俺も、けに方の営業所へ遷されることが決まったよ。社内でも噂が広まってさ……もう、居所がないんだ」
浩之は泣き言を並べてた。真奈美が「そんなに変だったのね」と慰めてくれることを、まだのどこかで期待しているような目だった。
だが、真奈美のは凪のように静まり返っていた。
「そう。自業自得ね」
「真奈美、頼むよ……!」
浩之は膝から崩れ落ち、真奈美の元にを伸ばそうとした。
だが、真奈美はすっと歩ろにがり、そのを避けた。
「俺、おがいなくなったら、本当にどうやってきていけばいいか分からないんだよ! 飯だって作れないし、のことだって何も分からない! おを失って初めて、おがどれだけ事だったか分かったんだ! やり直せないか? もう度だけ……もう度だけでいいから、チャンスをくれないか!?」
に額を擦り付け、涙とで顔をぐしゃぐしゃにして縋り付く男。
、陸が歳だったにも見た景だ。
、陸が学受験のにも見た景だ。
あの、真奈美はこの涙を信じた。庭を守るためだと自分に言い聞かせて、この男のを取った。
だが、今はもう違う。
「浩之さん」
真奈美は見ろしながら、静かに、しかし鋼のようにい声で言った。
「あなたは度も、私のことを事だなんてったことはないわ。あなたが恐れているのは、私を失うことじゃない。『の回りの世話をしてくれて、自分の勝を無条件で許してくれる都のいい政婦』を失うことよ」
「そんなことない! 俺はしてるんだ、おを!」
「しているの貯を勝に解約して、の賃を払うがいるかしら? している妻ので、別の女の名をして、平然とツーリングに誘うがいるかしら?」
浩之のがわなわなと震えた。
「あのモスバーガーで、あなたが『紗理奈さん誘ってあげたら?』って言われたの顔、忘れないわ。