"白いメットと二十二年の嘘" 第7話
「お義母様」
真奈美はの言葉を遮った。
「相談に乗るために、泊万円の温泉ロッジにツインベッドで泊まる必がありますか? 相の女性のマンションの賃を、毎万円ずつ振り込む必がありますか? 相の女性とお揃いの指輪を買って、の薬指にはめる必がありますか?」
のがパクパクと魚のように閉した。彼女は信じられないといった様子で浩之を振り返った。
「浩之……あなた、そんな……」
浩之は顔面を蒼にし、額から汗を滴らせて黙り込んでいる。
真奈美はカバンから、探偵の調査報告の複製を取りし、テーブルのにドンと置いた。
「ここにあるのは、浩之さんが過にわたって彼女と過ごした々の記録です。ラブホテルへの入り、温泉での抱擁写真、彼女の座への送細の控え。すべて揃っています」
これまで沈黙を守っていた義父の宗郎が、々しくを乗りし、その報告をに取った。
元方公務員で厳格な性格の宗郎は、老鏡をかけ、ページをめくるごとに眉の皺をくしていった。そこには、自分の息子が若い女といちゃつき、恥らずな笑みを浮かべている決定な瞬が何枚も収められていた。
「……浩之」
宗郎のく押し殺した声が、リビングに響いた。
「は、はい……親父……」
「これは、事実なのか」
広告
「……あ、あの……それは、魔が差したというか……」
バチン!
乾いた烈な音がリビングに炸裂した。
宗郎の平打ちが、浩之の頬を捉えていた。浩之はソファから転がり落ち、絨毯のにをついた。
「あなた!?」
が鳴をげたが、宗郎はそれをで制した。その顔はりで真っ赤に染まっていた。
「この馬鹿者が! 真奈美さんに度ならず度までも許してもらいながら、まだこんな破廉恥な真似を繰り返していたのか! しかも相の賃を払うだと!? お、陸の学の学費はどうするつもりだったんだ!」
「学費は……ちゃんと……貯めてあります……」
「嘘をつくな!」
真奈美が徹な声で告げた。
「学費のための定期預、今のに解約されていました。残は本来あるはずの額の分の。浩之さんが自分の名義だからと勝に解約し、彼女への貢ぎ物と、あの百シーシーの型バイクのカスタム費用に消えていました」
「な……何ですって!?」
までもが目を剥いた。孫の陸の教育資にをつけていたとなれば、いくら盲目な親バカであっても庇いきれるものではなかった。
「浩之……あなた、陸ちゃんの学費を使ってに……?」
「違う! あれはに借りただけで、のボーナスで補填するつもりだったんだ!」
「あなたの今ののボーナス見込み額は、宅ローンのボーナス払いと相殺したらほとんど残らないはずよ。
会社の業績ががっていること、私に隠していたけれど、与細を見れば分かります」
真奈美の徹底な追及に、浩之はもはや反論の余を完全に失い、に突っ伏したまま肩を震わせた。
宗郎はく、くため息をつき、老鏡をして眉を揉んだ。
「……真奈美さん」
「はい、お義父様」
「本当に……すまなかった。私の教育が違っていた。息子の始末、親としてわせる顔がない」
宗郎は々とをげた。かつて傲だった義父が、嫁である真奈美に対してこれほどまでにをげたことは、で度もなかった。
「お義父様が謝られる必はありません。これは浩之さんと私の問題です。ただ、私はもう、このと夫婦を続けることはできません。婚届にサインをしていただけるよう、ご両親からも説得していただけないでしょうか」
「……分かった。浩之、お、サインしなさい」
「親父! 勘弁してくれよ! 婚なんてしたら、俺はどうなるんだよ! も取られて、も取られて……!」
「おが撒いた種だ!」
宗郎のが、息子のけない懇願を叩き潰した。
「真奈美さん。の名義や慰謝料、財産分与については、弁護士を入れて法にきっちり清算させなさい。こいつの勝であなたがこれ以損をすることは、私が絶対に許さない。……、帰るぞ」
「でも、あなた……浩之が……」
「放っておけ! 自分のケツも拭けない男に育てた覚えはない!」
宗郎はの腕を無理やり引っ張り、浩之を瞥もすることなく玄関へと向かった。