"白いメットと二十二年の嘘" 第6話
「俺がどれだけでげて稼いできたとってんだ! このだって、おたちの着てるだって、全部俺の稼ぎだろ! ちょっと息抜きしたくらいで、の結婚活を全部チャラにする気か!? 婚? ふざけるな! 俺は絶対に判を押さないからな!」
真奈美はちがらず、広がっていく茶の染みをじっと見つめていた。
「判を押さないなら、調でも裁判でもいいわよ。証拠はこれ以ないくらい揃ってる。貞為の期、回数、相の素元、使った額の細。弁護士の先にも相談済みよ」
「弁護士……? お、そこまで根回ししてたのか……!?」
「当たりでしょ。私が論であなたと話をするとった? 過回、あなたの嘘と涙に騙されて許してしまった愚かな女だと、まだってるの?」
真奈美はバッグからもうつの類を取りした。
それは、緑の枠線が印刷された枚の――婚届だった。
「私の欄はもう記入してあるわ。証の欄には、私の妹と、陸がサインしてくれた」
「陸が……!?」
「そう。陸が自で名をいてくれたのよ。『母さんのしいを応援する』って言いながらね」
浩之はよろめくように退りし、壁に背をぶつけた。彼の世界が、元から音をてて崩壊していくのが目に見えるようだった。
そのの夕方、浩之はをびしていった。
き先など聞く気も起きなかった。
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の紗理奈のところへ泣きつきにったのか、それともホテルにでも泊まるのか。どちらでもよかった。
真奈美はで静かにリビングを片付け、緑茶の染みがついたテーブルクロスをゴミ箱に捨てた。使っていたものだが、未練はなかった。
夜を過ぎた頃、玄関のドアがき、陸が帰ってきた。
「母さん、ただいま」
「おかえり、陸。ご飯べる?」
「ん、途でラーメンってきたからいいや。……親父は?」
「てったわ。じゃなくて、で」
「そう」
陸はそれ以何も聞かず、蔵庫から麦茶を取りしてんだ。そして、リビングのテーブルのに置かれたクリアファイルに目を留めた。
「全部、話したんだな」
「ええ。ありがとうね、陸。あなたの言葉がなかったら、私、まだ決がつかなかったかもしれない」
陸はし照れくさそうにを掻いた。
「俺は当たりのこと言っただけだよ。親父のことは……正直、反面教師にするわ。男として番カッコ悪いき方だからな」
そして陸は、真奈美の肩をポンと軽く叩いた。
「母さん、はパート休みだろ? 引っ越しの物件、緒に見にこうぜ。俺も伝うからさ」
「……うん。ありがとう」
真奈美の胸の奥に、じんわりと温かい灯がともったような気がした。
だが、事態はそう簡単に幕をろすことはなかった。
翌週の曜の午、真奈美がパートから帰宅すると、のに見覚えのある級セダンがまっていた。
浩之の実のだった。
玄関をけると、リビングから甲い義母の声が響いてきた。
「ですからね、浩之も反省してるんですって! 男の甲斐性って言葉もあるでしょうに、いちいち目くじらをてて婚だなんて、世体が悪くて親戚に顔向けできませんよ!」
居に入ると、ソファには義母の(歳)と、嫌そうに腕組みをした義父の宗郎(歳)、そしてその横でさくなって俯いている浩之が座っていた。
「お義父様、お義母様。いらっしゃっていたのですね」
真奈美が静かに礼すると、は待ってましたとばかりにちがり、真奈美に詰め寄ってきた。
「真奈美さん! あなた、浩之に婚を迫ったんですって? それも探偵なんて品なものを使って! 夫婦のプライバシーを暴きてて、何が楽しいの? 浩之がで懸命働いているから、あなたも陸ちゃんも自由なく暮らせてきたんでしょう? ちょっと若い子とお茶をんだくらいで、鬼の首を取ったように騒ぎてて……!」
「お茶をんだくらい、ですか」
真奈美はややかにを見つめた。
「浩之さんから、そうお聞きになったのですか?」
「そ、そうよ! ツーリングの輩の子の相談に乗ってあげてただけだって! 浩之は昔から優しくて面倒見がいい子だから、頼られると断れないのよ。
それを浮気だなんて決めつけて……」