"妻を平手打ちした夫が、30分後「娘には言うな」と懇願した" 第15話
郵便受けに届いていた、通の留。本郵便の赤いスタンプが押された、内容証郵便。
差は――『佐藤美紀 代理 弁護士 栗原慶子』。
封筒のに入っていた数枚の用には、寸分の隙もない法律用語が並んでいた。
『貴殿は、佐藤浩氏が佐藤美紀氏と婚姻関係にあることをりながら、貞為を継続し、平穏な婚姻活を破綻に至らしめました(民法第百条・第百条:共同法為)』『つきましては、本面到達以内に、慰謝料として百万円を記指定座に送することを請求いたします』『なお、期限内にお支払いがなされない、直ちに管轄裁判所に対し損害賠償請求訴訟を提起いたします』
「……なんなのよ、これ」
莉奈の唇から、震える声が漏れた。百万円。その額の現実に、臓が鐘のように激しく鳴り響く。
「なんなのよ! 浩の嘘つき……!」
莉奈は爪を噛みながら、を握りしめた。
浩は言っていたのだ。『妻とはもう何もから完全にえ切っている。寝も別だし、庭内別居だ』『娘が就職したら正式に婚する話がついている。美紀も婚にはしているんだ』『おと緒になるために、今は会社でのを固めている最なんだ』
その甘い言葉を信じていた。社内で取締役候補ともてはやされる優秀な司。
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級レストランに連れてってくれて、ブランド物のネックレスを惜しげもなくプレゼントしてくれるの男。妻にを尽かされ、自分だけに本気になっていると信じ込んでいた。
だが、現実はどうだったか。
先の創記パーティー。現れた美紀は、浩が言っていたような「え切った仮面夫婦」の妻ではなかった。夫の面子をてるために控えめに振るい、周囲の役員夫たちにも卒なく挨拶をこなす、正真正銘の「営業部の本妻」だった。それに苛ち、優越を示そうと打ちした瞬、あの修羅が起きたのだ。
殴られた美紀の、あのたい目。取り乱すこともなく、静かにイヤリングを拾いげてっていった姿。そして今、私の元にあるこの内容証。
美紀は決して、精神を病んだれな女などではなかった。医療現で鍛えげられた、徹な現実主義者だ。そして、その背には敏腕の女性弁護士がついている。
スマートフォンの画面がった。浩からの着信だった。今だけでもう、回以かかってきている。
莉奈は通話ボタンを乱暴にタップした。
「もしもし! ちょっと浩、どういうことなのよ!」
『莉奈! やっとた……!』話の向こうの浩の声は、完全にずっていた。『おのところにも届いたのか?! 弁護士からのが!』
「届いたわよ! 慰謝料百万円請求するっていてある! ねえ、どういうこと?! 妻とは婚のができてるって言ってたじゃない! 庭内別居なんて嘘じゃないの!」
『お、落ち着け莉奈! あいつが勝に暴してるだけだ! あいつは更期でがおかしくなってるんだよ! あんな、ただの脅しだ、無すればいい!』
「無できるわけないでしょうが!!」莉奈は部に響き渡る声で叫んだ。「裁判所に訴えるっていてあるのよ! 裁判になったら会社にバレるじゃない! 私、営業部にいられなくなる! 親にだってバレるのよ!」
『俺が何とかする! 俺がは何とかするから……!』
「何とかするって、どうやって?! 浩、あなた今朝役員に呼ばれてたでしょ! 社内ですでに噂になってるのよ! パーティーで奥さんを殴ったって、総務部がホテルに聞き取り調査に入ったって!」
話の向こうが、ピタリと沈黙した。息を呑む音だけが聞こえる。
「……総務が、調査を?」浩の掠れた声が、恐怖に震えていた。
「そうよ! ホテルの防犯カメラの映像を会社が取り寄せたって聞いたわ! あなたが私を庇って奥さんを殴る瞬が、バッチリ映ってたんでしょうね! もう隠し通せるわけないじゃない!」
『莉奈、頼む……おだけは俺の方でいてくれ。俺たちはしってるだろう? 会社を辞めることになったって、で――』
「ふざけないでよ!!」
莉奈の胸ので、男に対するわずかなやが、瞬で汚らわしい汚へと変わった。
「誰があなたみたいな落ち目の暴力男とするもんですか! 私を巻き込まないで! 全部、あなたが嘘ついて私を騙したんじゃない!」