"正月の料亭で仲居に渡された「逃げてください」の紙切れ" 第17話
という言葉の欺瞞。それは、娘のようにしていたのではなく、「文句を言わずに無で尽くしてくれる便利な具」として扱っていたに過ぎないという真実が、のに晒されたのだ。
「……私のを確にさせていただきます」
私はちがった。見ろす線のに、縮こまる義母と、顔を背ける義姉と、を抱える夫がいた。
「私は本付で、お義母さんの活サポート、および通院付き添いの専任担当から完全にります」
「ま、真由美……!」
夫が鳴のような声をげたが、私は容赦なく言葉を続けた。
「来週曜、修さんが会社に半休を申請し、お義母さんを連れて域包括支援センターへってください。介護認定の申請は、そこに記入例を添えて置いてあります。ケアマネジャーが決まり、公な介護サービスが導入されるまでのの通院は、修さんと美智子さんのおでスケジュールを分担してください」
「な……何よ! 私に毎週来いって言うの!?」
義姉が切り声をげた。
「毎週来る必はありません。回、週末に様子を見に来て、買いしを伝うだけで分です。残りの平と緊急対応は、息子である修さんの担当です。どうしても都がつかないのみ、部の自費通院介助サービスを使ってください。費用はお義母さんの座からしてください」
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「そんな……!」
「私の休暇は、私の仕事と、娘の音のために使います」
私はバッグを肩にかけ、襖の引きにをかけた。
「これ以の無理な求や、私への無断での計画をされるは、即座に婚姻関係の破綻として婚調を申してます。その際は、これまでの実績と経緯をすべて証拠として庭裁判所に提しますので、そのおつもりで」
襖をけ、廊へる。背からは、誰の声も追いかけてこなかった。
玄関をると、の澄み渡った青空が広がっていた。たい空気を胸いっぱいに吸い込む。肺の奥まで、痛いほど清らかな空気が満ちていくのをじた。
肩に乗っていた、の見えない荷が、音をてて崩れ落ちていた。
そのの夜、自宅のマンションに戻ると、夫はリビングのに正座して待っていた。
音が自分の部で勉しているのを確認してから、夫はく、くをげた。畳に額がつくほどの座だった。
「……真由美、本当に悪かった」
震える声だった。
「俺……おが何でも際よくやってくれるから、それに甘えてたんだ。母さんのことも、姉さんのことも、波をてたくなくて……おに全部押し付けて、楽をしようとしてた。最だった。本当に、申し訳なかった」
私はコートを脱ぎ、ダイニングチェアに腰をろした。座する夫の頂部を、ややかに見つめる。
かつての私なら、「もういいよ、顔をげて」と言っていただろう。相の罪悪をく解いてあげたくて、自分が傷ついたことをみ込んで許していただろう。
けれど、今の私には、そんな慈は微も残っていなかった。
「修さん」
「……うん」
「際よくやっていたから甘えていた、んじゃないわ」
夫が、恐る恐る顔をげた。
「私が必で同僚にをげて、自分のを削って、血を流しながらやりくりしていたのを、あなたが見ないふりをしていただけよ。『妻が器用だから』という言葉で、自分の卑怯さを正当化していただけ」
夫は息を呑み、再び顔を伏せた。
「あなたの謝罪の言葉に、何のもじないわ。これからは、言葉ではなくで見せてもらうから」
「……わかった。母さんの申請も、病院の付き添いも、全部俺と姉さんでやる。おには切迷惑をかけない」
「当然です」
私はちがり、キッチンへ向かった。
関係が修復したわけではない。失われたの信頼は、たった度の座で戻るようなっぽいものではなかった。ただ、力関係が完全に逆転し、当な搾取の構造が破壊されただけだ。この男が本当にの自したとして責任を果たすのか、それとも再び逃げすのか。それを見極めるのは、これからの話だった。
ヶが過ぎ、になった。
都内の桜が散り、青葉が芽吹く季節。私は変わらず、医療法の事務でフルタイムの正社員として働いていた。