"正月の料亭で仲居に渡された「逃げてください」の紙切れ" 第14話
夫の線が、のを滑る。その顔から、急速に血の気が引いていくのが見えた。
「な、何なんだよ……これ……」
「過の、私の実績よ」
私は腕を組み、徹な声で言い放った。
「私があなたのお母さんのために使った休暇は、。に換算すれば数百。もしこれをヘルパーの換算にすれば、百万円以の労働力を無償で提供してきた計算になるわ。それに引き換え、実の息子であるあなたの実績は、たったの。義姉の美智子さんはゼロ」
夫の喉が、ヒュッとさく鳴った。
「そして、これが役所で調べてきた公介護サービスの費用よ。お義母さんの今の状態なら、介護保険を使えば、に万円で通院支援も買いしもデイサービスも利用できる。お義母さんので分にお釣りが来る額よ。施設に入って全財産を失うなんて話、どこにもしないわ」
「ま、真由美……お、こんなことまで……」
「ええ、調べたわ。あなたたちが『がかかる』『おが辞めるのが番理だ』と嘘をつき続けてきたから」
私はを乗りし、夫の目を真っ向から見据えた。
「、曜の午。お義母さんのに、美智子さんを呼びなさい」
「え……? 姉さんを?」
「そうよ。親戚はも呼ばなくていい。お義母さん、美智子さん、あなた、そして私。当事者のだけで、顔を突きわせて話をしましょう」
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夫は恐怖に顔を歪め、ずさりするようにこたつのでを縮めた。
「い、いや……今さら姉さんを呼んだって、また揉めるだけだろ! 母さんだってショックで寝込んでるんだぞ!」
「寝込んでいようが関係ありません。逃がしませんよ」
私は元の類を指先で叩いた。
「この数字を全部広げて、誰がどれだけの責任を負うのか、黒つけます。断るなら、私は来週曜、この類を持って弁護士のところへきます。婚姻関係を継続しがたいな事由として、婚の続きをめます」
「り、婚……!?」
夫の絶叫が、リビングに霊した。
私はもう、夫の狼狽に何のも抱かなかった。ただややかに見ろし、最の言を突きつけた。
「美智子さんに話しなさい。今すぐ」
夫は、青ざめた顔のまま縛りに遭ったようにち尽くしていた。
「……話って、今からかよ?」
「今すぐよ。スピーカーにして、私の目のでかけなさい」
逃げを塞がれた夫は、喉仏をさせながら、震えるでポケットからスマートフォンを取りした。画面をタップする指先が、刻みに震えている。
コール音が回、回。やがて、向こう側で嫌そうな義姉の声が響いた。
『……何よ修。こんな夜遅くに』
「あ、姉さん……のことなんだけど」
夫は私の線に怯えながら、掠れた声を絞りした。
「、午に母さんのに来てほしいんだ。
……真由美も緒に、で話がしたいって」
話の向こうで、鋭く息を吸い込む音が聞こえた。
『はあ!? 何言ってるのよ、くわけないでしょう! 幹線のチケットだって取ってないし、はうちの旦の親戚への挨拶もあるのよ! だいたい、正にあんな恥をかかせておいて、何の打ちもしないで呼びつけるなんてどういう神経――』
私は夫のから、無言でスマートフォンを取りげた。スピーカーに向かって、く、澄んだ声を落とす。
「美智子さん、真由美です」
瞬で、受話器の向こうが静まり返った。
「、お義母さんのに来られないのであれば結構です。その代わり、美智子さんが作られた『週介助計画表』のコピーと、私がまとめたこれまでの介護実績の記録を持って、週けに弁護士のところへきます」
『……は? 弁護士……?』
「親戚を巻き込んだ虚偽の流布による精神苦痛、および私に対する未遂として、法な続きをめます。もちろん、美智子さんのご主のお名も関係者として類に記載することになりますが、よろしいですね?」
『なっ……な、何言ってるのよ! 脅す気!?』
「脅していません。事実を申しげているだけです。世体を気にされるのは、美智子さんも同じでしょう?」
義姉の荒い息遣いだけが受話器から漏れる。自分の全圏からをで撃っていたは、自分の庭にのがんできた途端、何も言えなくなるのだ。