"「月5万払うから」離婚した私に介護を頼む元夫" 第4話
の底れない浅ましさと傲さに、私は吐き気すら覚えた。
「……健さん」
私の声が、廊にく沈み込む。
「あなたは今、自分がどれほど異常な提案をしているか、理解できていますか?」
「な、何が異常だよ! こっちは誠を見せてを払うって言ってるんだぞ! に頼んだらもっとかかるんだから、お互いにとって得な話だろ!」
「得? 誰にとってですか?」
私はドアノブを握るに力を込めた。
「私は、あなたたちの請け介護業者ではありません。度と、私のに現れないでください」
「美!」
「あと分で警察が巡回に来るように、すでに先ほど通報しました」
嘘だった。だが、その言は効果覿面だった。「警察」という単語がた瞬、健の顔から血の気が引いた。
「け、警察に通報した……!? お、本気かよ! 会社のやつらにられたらどうすんだ!」
「られたら困るようなことを、あなたがしているんです。くお母さんを連れてちりなさい。次にこの敷内に歩でも入ったら、建造物侵入で被害届をします」
「美さん! あんたなんて女よ! 健に捨てられたき遅れのくせに!」
喚き散らす義母の腕を、健が力任せに引っ張った。
「母さん、もういい! くぞ! ここにいたら本当に警察が来ちまう!」
「しなさいよ! 私はここにむの! ここならご飯も作ってもらえるし、お呂も沸かしてもらえるのよ!」
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エレベーターホールへと引きずられていく義母のみっともない絶叫が、夜の廊に響き渡る。型スーツケースの輪が、を激しく擦る障りな音がざかっていく。
チーン、とエレベーターの扉が閉まる音がした。
完全な静寂が、廊に戻ってきた。
私はゆっくりとドアを閉め、本締めの鍵をにかけ、チェーンを戻した。カチャリという属音が、やけにく響いた。
たいフローリングに、そのにへたり込むように座り込んだ。膝が刻みに震えている。袋をしていなかったのひらは、え切って覚がなかった。
勝ったわけではない。ただ、嵐のような理尽を、扉枚を隔てて必に押し返しただけに過ぎない。、あの親子に搾取され続けて麻痺していた私の覚が、ようやく激しい痛みとともに蘇ってきていた。
気ポットのスイッチを入れ、湯を杯む。胃のに温かいものが落ちていくと、ようやく呼吸がってきた。
計の針は、夜の半を回っていた。は信用庫の初の締めだ。朝番に勤しなければならない。こんな連のために、私のしい活を狂わされてたまるものか。
私はベッドに入り、無理やり目を閉じた。しかし、神経がぶって眠気など到底やってこない。
暗の、枕元に置いたスマートフォンが、けたたましい振音をてたのは、夜分のことだった。
画面が青くる。表示された名を見て、私は息を呑んだ。
『佐伯 智子』
元夫の姉。隣に嫁ぎ、、母親の介護や実の法事には切をさず、盆と正にだけ現れては私に茶をさせ、文句だけを垂れ流していった姑だ。
着信が切れると同に、LINEの通がて続けに件、画面を埋め尽くした。さらに、数秒の音声メッセージが送りつけられてくる。
震える指で、私は音声の再ボタンを押した。
スピーカーから、を劈くようなヒステリックな声が炸裂した。
『ちょっと美さん!! あんた何様のつもりなの!? さっき健から泣きながら話があったわよ! 齢の母をスーツケースごと真のに追いしたんですって!? でなしにも程があるでしょ! あんたにのはないわけ!?』
荒い息遣いのあと、さらに罵倒が続く。
『も佐伯の飯をわせてもらっておいて、婚した途端にこの仕打ち!? 、親戚にあんたのさを全部言いふらしてやるからね! 覚悟しなさいよ!!』
静まり返った部のに、義姉の狂気に満ちた声が反響した。
私はえ切った画面を見つめたまま、暗ので、ち尽くしていた。
元で途切れた義姉の荒い息遣いと、それに続くツーツーという子音。
静まり返ったワンルームに、スマートフォンの青いだけが私の顔をたく照らしていた。