"「月5万払うから」離婚した私に介護を頼む元夫" 第3話
私はチェーンをかけたままドアを閉め、鍵を回した。玄関のにち尽くしたまま、たい壁に背を預ける。胃のあたりが、ギリギリと締め付けられるように痛かった。
約束の分を分過ぎた頃、エレベーターの到着を告げる子音が廊に鳴り響いた。
荒い音とともに、息を切らした健が姿を現す。しわくちゃになったスーツに、曲がったネクタイ。婚届をしたの綺麗な課の姿はどこにもない。
「母さん! 何やってんだよ、こんなところで!」
「健! やっと来たのね! 見なさいよ、美さんが酷いのよ、私をにも入れないで警察を呼ぶなんて脅して……!」
義母は息子を見るなり、まるで虐待された被害者のように顔を歪めて泣きついた。健は母親をなだめるように肩を叩きながら、忌々しそうに私のドアを睨みつけた。
インターホンが鳴る。私はチェーンをかけたまま、再びドアを数センチけた。
「来てくれたのね。荷物をまとめて、連れて帰ってください」
「美、頼むから回けてくれ。廊で話すようなことじゃないだろ。所の目もあるんだ」
健が声で懇願するように言った。自分の保と世体だけは、昔から倍気にする男だった。
「けません。ここで話してください」
私の頑なな態度に、健は焦りと苛ちを募らせたように髪を掻きむしった。
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「なあ美、しだけでいいから話を聞いてくれよ。俺だってこうするしかなかったんだ。玲奈のやつ、急に『お義母さんとは絶対に同居しない、親れできてないなら結婚も考え直す』なんて言いしてさ……! しいマンションの初期費用だって俺が全額払ったのに、今さら破談にできるわけないだろ!」
「それは、あなたたちの問題です」
「俺たちだけの問題じゃないだろ! もおが母さんの面倒を見てきたから、母さんはおじゃなきゃダメな体になっちまったんだよ!」
を疑う言葉だった。
、無償で、自分のとキャリアを削って尽くしてきた労働。それを「おが甘やかしたせいだ」とすり替えられたのだ。りで界が赤く染まりそうになるのを、私は懸命にたい理性で押し戻した。
「私が甘やかした? 冗談を言わないで。健さん、あなたが度でもお義母さんの病院に付き添ったことがありましたか? 圧剤の種類を言えますか? 介護保険の支援の申請用、どこにすかっていますか?」
私の徹な問いかけに、健は言葉を詰まらせた。
「そ、それは……おがやってくれてたから……」
「ええ、私がやっていました。妻だから、族だからとって、を削ってやっていました。でも、あなたはそれを何と言いました? 『にいてパソコン触ってるだけの暇な仕事なんだから、親の病院くらいけ』と言いましたよね。
信用庫でフルタイムで働きながら、休を全部お義母さんの通院で使い果たしていた私の仕事を、あなたは度でも尊しましたか?」
「美さん、何よその言いは! 嫁が姑の面倒を見るのは当たりでしょうが!」
横から義母がキャンキャンと甲い声をげる。
「当たりではありません。そして何より、私はもう嫁ではありません」
私はをたく見据えた。
すると健が、何をいついたのか、すがりつくような卑屈な笑みを浮かべて歩詰め寄ってきた。
「分かった、分かったよ美。タダでやれとは言わない」
懐から財布を取りそうとする仕を見せながら、健はさも名案をいついたかのように言った。
「毎、を払うよ。万……いや、万す。どうだ? 今まで通り週に、回、母さんの様子を見にって、病院の付き添いと買いしをやってくれればいい。部にまわせるのが嫌なら、母さんを実に戻して、おが通いでお世話をしてくれればいいんだ。万だぞ? おだって信の事務職の料だけじゃ、老だろ? 割のいいバイトだとえばいいじゃないか」
万円。
、私が捧げてきたの対価を、この男は「万円のバイト」に換算した。
しい女との甘い活を守るため。自分のを汚さず、面倒な老親の世話をアウトソーシングするため。
婚したばかりの妻に、遣い銭を握らせて都のいい介護員として再契約しようとしている。