"義母を沈めた十六時四十四分" 第1話
スマートフォンの画面がく震え、無質な械音がテーブルの肌を叩いた。液晶に表示された刻は午分。
通バーの先には、見慣れた赤いリンゴのアイコンとともに「着信」の文字が浮かびがっている。
通話ボタンを押す気力すら湧かないまま、私はスーパーのバックヤードのえ切ったパイプ子にく腰を沈めた。蛍灯の青いが、制のエプロンに落ちている。
それからちょうど分、分。まるでこちらの沈黙を見透かし、逃げを塞ぐかのように、て続けに通のメッセージが滑り込んできた。 『わざと無してるの?』
『言いたいことあるなら言ってちょうだい』 い文字列のから、義母・輪貴恵の刺々しい声が鼓膜の奥に直接響いてくるようだった。息を吸うたびに、胸の奥がきりきりと痛む。
私は歳になる輪紗智。夫の亮太と結婚して、歳になる息子の陽翔を育てながら、所の品スーパーで受発注と品しのパートタイマーとして働いている。
はバックヤードでい野菜のコンテナを運び、発注端末と睨みい、夕方には保育園へ自転をらせ、帰宅すれば息つく暇もなく夕飯の支度と洗濯と呂入れに追われる。
世般の、どこにでもある共働き庭の常を必に紡いでいるつもりだった。
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だが、私の庭には、目に見えない巨なひび割れが最初から入っていたのだ。そのひび割れのにいるのが、夫の亮太であり、その背に君臨する義母の貴恵だった。
の夜、亮太は度分の微を理由に、まるで治の病にでも侵されたかのようにリビングのソファへ倒れ込んだ。額に濡れタオルを当て、オーバーにため息を吐きながら、私が作った筑煮と焼き魚に箸をつけようともしなかった。
「……こんな脂っこいもの、えるわけないだろ。胃が痛いって言ったよな? 紗智の作る飯はいつも栄養のバランスが悪いんだよ。俺を殺す気か」
そう吐き捨てて寝に引きこもり、夜遅くにコソコソとカップ麺を啜っていた夫の姿を、私はめた目で見つめていた。
そして案の定、翌朝勤した亮太は、自分の母親に話で告げをしたのだ。「妻の料理が抜きで栄養がないせいで、体調を崩した」と。義母からの追撃LINEはそのの朝から始まっていた。
『息子が体調悪いのは栄養のあるものをべさせてないからよ』
『働いてもらってるんだからしっかりしなさい』
『母親の自覚がりないんじゃないの? 孫の成に響がたらどうするの』 それらの言葉が、私のので澱のように溜まり、黒い炎となってくすぶっていた。
昼の休憩が終わり、午の業務に戻っても、私のは械のようにきながら、の芯だけがえ切ったりで冴え渡っていた。
菜のフィルムを巻き、値引きシールを貼り、入荷伝票に受領印を押す。
同僚の澄さんが「紗智ちゃん、顔が悪いよ。丈夫?」と配そうに声をかけてくれたが、私はただ「寝なだけです」と引き攣った笑みを返すのが精杯だった。
夕方、パートの勤務が終し、更で私に着替えた、計の針は分を指していた。
私はロッカールームのロッカーに寄りかかり、スマートフォンの画面を呼びした。画面の向こうで、午の「言いたいことあるなら言ってちょうだい」という挑発なメッセージが、まだ嘲笑うようにっている。
私は震える指先で、画面をタップした。これまで胸の奥底に押し込め、庭の平穏という名のもとにみ込んできたすべての言葉を、文字ずつ、魂を削るようにして打ち込んでいった。
『そうですね、お義母さんがそこまで仰るなら、ずっとしていた「言いたいこと」をお伝えさせていただきます』 文字を打つ指が、を帯びていく。『以「息子が体調悪いのは栄養のあるものをべさせてないから」「働いてもらってるんだからしっかりして」とLINEをいただきましたよね』
『まず、私もパートで働いて計を助けています。それなのに、仕事以の事も育児も、息子さんは切やりません』