"夫の隠し子を知った私に、息子が離婚を3日待てと言った" 第4話
「ありがとう」
私はのドアをけ、畳のにを踏みした。靴音が静かな夜に響く。玄関にづくと子錠が鳴り、リビングの温かいかりがへと漏れした。
健はソファに座り、を組んで経済ニュースを見ていた。目ののローテーブルには、半分ほど残った赤ワインのグラスが置かれている。ドアがく音がしても、彼は顔をげることなく気だるげに尋ねた。
「どこへっていたんだ?田さんが、午からかけたと言っていたよ」
私はバッグを玄関の棚に放り投げ、彼と向かいう用のソファに腰をろした。いつもなら私は毎晩この所に座り、果物を剥き、お茶を入れていた。そして私にはよくわからない会社の話をただ静かに聞いていた。
あの頃はそれが妻としての幸せであり、夫婦の穏やかなだとっていた。だが今はただ吐き気がするだけだ。
「島健」
私は彼のフルネームを呼んだ。結婚して、彼をフルネームで呼んだことなどほとんどなかった。あなた、か健かのどちらかだ。
彼も今は疲れたようで、ようやく線を画面からし私を見た。どうしたんだ、と彼は言った。
彼は確かに見栄えの良い男だ。歳になっても顔ちは端正で、鍛えげた体はどんなを着ても様になる。さやかが私より歳は若くても、彼に惹かれるのは議ではない。
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私はスマートフォンからあの写真をき、画面を彼の方へ向けた。写真のでは彼が男の子を抱き、さやかが彼の腕に絡みつき、で楽しそうに笑っている。
私はスマートフォンをローテーブルに投げ捨てた。ガラスの表面がドンと鈍い音をてた。
健は写真を瞥し、顔の笑みをしずつ消していった。だが慌てる様子は微もなかった。眉つかさない。ただゆっくりとソファの背もたれに体を預け、ワインを含むと私の目をまっすぐに見つめ返した。
そして信じられないほど落ち着いた調で言った。
「調べたのか」
私は呆れて笑いそうになった。
「健、買い物にかけたらたまたま居わせたのよ。でつまみいをするのに、わざわざの所の商業施設を選ぶなんて随分とを省いたものね」
彼はもうワインをみ、グラスを置いた。しの沈黙の、彼はなんと軽く笑みまで浮かべたのだ。
「君が見たと言うなら、もう隠すつもりはない」
その言で、私のので何かの糸が完全にプツリと切れた。隠すつもりはない。彼はこんなにも淡々とした調でそんな言葉を吐けるのか。まるで今の夕のおかずを報告するような気軽さで。
「あの子はいくつ?」
自分の声が氷の塊のようにたく響くのが分かった。
「歳半だ」
「あの女は誰?」 「佐藤さやか。君も会ったことがあるだろう」 「会ったことくらい分かっているわ」
私はソファの肘掛けをく握りしめ、爪が革にくい込んだ。
「私が聞いているのは、あなたと彼女がどういう関係なのかってことよ」
健はちがり、きな窓のに歩いていって私に背を向けた。夜のがガラスに反射し、彼のがく伸びていた。
「彼女は、僕の息子の母親だ」
彼は羽のように軽い調で言った。まるで自分には無関係な事実を述べるかのように。私は笑った。唇は震えていたが、顔に浮かんだ笑みはどうしても消せなかった。
「あなたの息子?じゃあ私は何なの?は何なのよ。あの子はもう歳よ。あなたが彼と緒に事をしたことが何回ある?」
私はちがった。
「あの子が賞を取った、競技会にた、病気になった、あなたは体どこにいたのよ」
健は振り返り私を見た。その目にはなんと苛ちのすら浮かんでいた。
「話を逸らすな。は僕の息子だ。それは永に変わらない。だが、陸も僕の子供なんだ。あの子にもしてくれるが必だろう」
陸。彼はすでにその子供に名まで与えていたのだ。私はローテーブルのにあった赤ワインのグラスを掴み、に力いっぱい叩きつけた。
赤い液体がにび散り、ガラスの破片がを反射してトゲトゲしくった。
健は眉をひそめ、歩ずさりした。