"夫の隠し子を知った私に、息子が離婚を3日待てと言った" 第2話
彼は息子と緒にアイスをべたことすら、度もなかったのだ。
ゆりが私の腕をく掴んだ。その声は震えていた。
「美桜、ちょっと。何も言わないなんて怖いよ。何か言ってよ」
私はスマートフォンをしまい、すりに背を預けてく息を吸い込んだ。
「帰りましょう」 「帰るって」
ゆりは目を丸くした。
「このまま帰るの?あの棒猫のところへ乗り込んで、引っ叩いてやらないの?」 「帰るって言ったら帰るの」
私は彼女の首を掴み、度も振り返ることなく階をにした。に乗り込み、ドアを閉めて初めて気がついた。私ののひらには、自分の爪がい込んでできた赤い血の跡が無数についていた。
ゆりはを発させながら、何度もルームミラーで私を見ては、何か言おうとしてをつぐんだ。
私はスマートフォンを取りし、先ほどの写真を拡して男の子の顔を見た。った顔ち、眉や目元には確かに健の面がある。特にあの切れの目は、健と全く同じ型から抜いたようだった。
齢は歳といったところ。つまり、健とさやかはなくとも、は関係が続いているということになる。
、。その頃私は、健の事業を懸命に支え、の拓を伝っていた。過労で体を壊し、ヶも入院した期だ。
私の息子はまだ学で、毎「お父さんはいつ帰ってくるの?」
広告
と私に聞いていた。私は「お父さんはお仕事が忙しいの。もうしの辛抱よ」と嘘をつくしかなかった。
本当にふざけている。私はの窓にを寄りかからせ、ふっと笑い声を漏らした。笑っているうちに目がくなってきた。
ゆりは部座席にティッシュの束を投げつけ、私を叱りつけた。
「美桜、やめてよ。泣きたいなら泣けばいいじゃない。笑うなんて逆に怖いわよ」
私はティッシュを受け取らず、の甲で無造作に目を拭った。自分でも驚くほど声は落ち着いていた。
「ゆり、法律事務所へ向かって」 「こんなに?にしなさいよ。は曜でお休みだけど」
ゆりは唇を噛みしめ、秒ほど沈黙した。そして力くの方向を変え、交差点を急旋回しての側へと向かった。
、私は息子のに話をかけた。回目の呼びし音で彼がた。
「母さん?」
しかすれた声。また徹夜でプログラムをいていたのだろう。彼の声を聞いた瞬、喉の奥に何かが詰まった。数秒呼吸をえ、ようやく言葉を絞りした。
「、つだけ聞かせて」
私はスマートフォンをく握りしめた。
「もしも、あくまでもしもの話よ。私とお父さんが別れることになったら、あなたはどっちについてくる?」
話の向こうで秒ほどの沈黙があった。次にの声が響いた、その声はひどくくなっていた。
「母さん、何かあったの?」 「理由は聞かないで。とにかく答えて。どっちについてくるの?」
彼はためらうことなく、きっぱりと言い切った。そしてを押すようにもう度繰り返した。
「母さん、何があっても僕は母さんについてくよ」
私は目を閉じ、ついに涙をこぼした。だが、声だけは絶対に漏らさなかった。
「分かったわ。く寝なさい。あまり夜更かししちゃだめよ」
私は話を切り、スマートフォンを伏せて膝のに置いた。ゆりのはすでに法律事務所のに到着していた。彼女はのエンジンを止めず、私を振り返って言った。
「渡辺弁護士は私の兄の学の同級なの。話しておいたから、わざわざ休勤して待っててくれてるわ」 「ありがとう」 「お礼なんて言わないでよ」
彼女は顔を背けたが、その声は泣きそうにかすれていた。私も緒にくから、と彼女は言った。
渡辺弁護士は代の、縁の鏡をかけた男性だった。これまで数えきれないほどの修羅を見てきた熟練の顔つきをしていた。彼は温かいお茶をしてくれ、婚協議の雛形を印刷して私のに置いた。
「美桜さん、まずは追加すべき条件をご確認ください。それにわせて修正します」
私は枚枚類をめくった。財産分与、株式の譲渡、産の分配、親権。どの項目もさな刃物で私のを切り裂くようだった。
それでも私は文字文字、全てに目を通した。