"亡き娘の純金バングルを、義母は義妹の再婚費用にしようとした" 第10話
私は、きているこの子の鳴を、完全に見落としていたのだ。
『奈緒、あのはおかしいよ』
ふいに、奈緒がポツリと呟いた。
「え……?」
「お姉ちゃんがね……くなるし、うちに遊びに来た、言ってくれたの」奈緒はい目をして、涙を拭った。
「そのも、お義母さんがアポなしで来て、蔵庫のを勝にチェックして『ロクなもの作ってない』って私をネチネチ責めてて……健太は横でらんぷりしてテレビ見てて……。たまたまお惣菜を届けに来てくれたお姉ちゃんが、その景を見て、ものすごい剣幕でお義母さんに言い返してくれたの」
美咲らしい、とった。曲がったことが嫌いで、妹のことになると自分のこと以にる子だった。
「お姉ちゃん、お義母さんが帰った、私のを握って泣いてた。『奈緒、あのはおかしい。健太さんも、母親も、あなたをとして扱ってない。お願いだから、荷物をまとめて度実に戻りなさい』って……」
「美咲が……そんなことを……」
「うん。でも私……『丈夫だよ、健太も普段は優しいから』って、笑って誤魔化しちゃったの。お母さんを配させたくなかったし、せっかく結婚したんだから、私がすればうまくいくってい込んでたから……」
奈緒の声が、悔で引き裂かれそうに震える。
「あの、お姉ちゃんの言うことを聞いていればよかった。
広告
お姉ちゃん、すごく配そうな顔をして……帰り際、に乗るに、私を抱きしめてくれたの。『何かあったら、絶対にしちゃダメだよ』って……」
それが、美咲が、奈緒に遺した最の言葉だったのだ。
美咲は、もから分かっていたのだ。妹が、あのでじわじわとを殺されていることを。だからこそ、命の今、私の枕にってまで、叫んだのだ。
『私のところに来ないで! 奈緒のところへって!』
美咲。全部、あなたの言う通りだったわ。
私はちがり、仏壇のに歩み寄った。美咲の遺のに、取り戻したばかりの純のバングルを置いた。写真のの美咲は、穏やかな笑顔で私を見つめている。
私は仏壇に向かって、のでく誓った。
美咲、見ていて。あなたの切なネックレスも、そして何より、あなたが命がけで配していた奈緒のも。母親の私が、絶対にあの連の靴のから奪い返してみせる。
計の針が、午を回った。はすっかりが落ち、たいの夜が戸をカタカタと揺らしていた。
そのだった。
ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン!!
静寂を破るように、玄関のインターホンが狂ったような連打音を響かせた。度や度ではない。親の仇でも追い詰めるかのように、執拗にチャイムが鳴り響く。
奈緒が「ひっ」と息を呑み、ソファのにを縮めた。
私はちがり、廊のモニターへ向かった。
画面に映しされていたのは、りで般若のように顔を歪ませた千恵子だった。乱れた髪を振り乱し、レンズを睨みつけている。そのろには、気まずそうに俯いた健太の姿もあった。
「けなさいよ! 子さん! 奈緒さん! いるんでしょ!」
インターホンのマイク越しに、千恵子の切り声が夜の宅に響き渡る。所迷惑など微も気にしていない、常軌を逸した剣幕だった。
私は迷わず玄関へ向かい、チェーンをかけたまま、ドアをわずかにけた。
「何の御用ですか、夜分に」
ドアの隙からたい線を投げかけると、千恵子はドアの縁を両で掴み、無理やり押しけようとしてきた。
「何の御用ですって!? よくそんなシラジラしいことが言えるわね! 買い取りから連絡があったわよ! あんな騒ぎして、バングルを持ってったんですってね!?」
「私の娘の遺品を引き取っただけです。当然の権利です」
「権利ですって!? そのせいで、由梨ちゃんがどれだけ泣いたか分かってんの!?」
千恵子は持っていた黒いベルベットの箱を、ドアの隙から玄関のたたきへ向かって、乱暴に投げつけた。
カチャリ、と乾いた音がして、箱が靴脱ぎの段差に落ちる。
蓋がねがり、からこぼれたのは。
あのアコヤ真珠のネックレスだった。
い珠が、灯のを反射して、痛々しく鈍いを放っている。
「返してやるわよ! そんなの呪われたネックレスなんて、こっちから願いげよ!」