"「魚臭いから焼肉屋へ」30人を連れ去った義妹が広めた嘘" 第14話
「さん、ありがとうございます。を込めて作りました。召しがってください」
受け取った代のみが、のひらによく染み渡る。
あの同窓会チャットで事実をった同級たちも、週末ごとに魚の簾をくぐってくれた。誰もが申し訳なさそうに線を泳がせながら、それでも「美しかった」「また来るよ」と、正規の代を払って笑顔で帰っていく。
父が遺した簾は、もはや過の遺産ではなかった。現代の理尽な悪に晒され、徹な法と事実で守り抜いたことで、より固な信頼となってこのに根を張っていた。
夫の健にも、確な変化が訪れていた。
あの、公民館のトイレに逃げ込んだ理恵からの話を自ら叩き切って以来、健が実の肩を持つことは度となかった。休の夕方になると、言われるまでもなく紺のエプロンを締め、の洗いや伝票理を伝うようになった。
「奈緒、今の仕入れの伝票、全部エクセルに入力しておいたぞ。……違いがないか、で見てくれ」
「ありがとう。助かるわ」
余計な言い訳も、押し付けがましい優しさもない。私が引いた「仕事と責任の境界線」を、健もまたのとして受け入れ、静かに守り続けていた。
理恵からの連絡は、完全に途絶えていた。同窓会の幹事を永久追放され、横領した差額とお事券の返還を命じられ、魚へのキャンセル料万円を自腹で面した義妹。
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親族のでも急速に孤し、あれほど誇らしげだったSNSのアカウントも、いつのにか跡形もなく削除されていた。
季節が巡り、枯らしが商のを揺らし始めた、の平の夕暮れ。
昼の営業を終え、夜のに向けて仕込み台を拭いていただった。
帳の固定話が、静かに鳴った。
受話器を取る。
「はい、魚でございます」
話から、ひどく緊張した、微かに震える声が聞こえてきた。
『……あ、あの。今週の曜の夜……名で、予約をお願いできますでしょうか』
聞き覚えのある声だった。かつて話で「魚臭い」と笑い、すべてを破壊しようとした、あの義妹の声。
かつての私なら、揺し、内だからと特別扱いをしようとしたかもしれない。だが今の私に、迷いは切なかった。
私は卓の予約台帳をき、ボールペンの先で曜の欄をなぞった。
「曜の夜ですね。ありがとうございます。お席はご用できます」
を完全に削ぎ落とした、の顧客に対する、淀みのないプロの接客。
「恐れ入りますが、ご予約のお名とお話番号をいただけますでしょうか」
受話器の向こうで、理恵がさく息を呑む気配がした。「私よ」と名乗れば、族のに甘えられると、ほんの瞬だけ期待したのかもしれない。
だが、数秒の沈黙の、絞りすように返ってきたのは、自らのフルネームだった。
『……藤本、理恵です。話番号は……』
理恵もまた、理解したのだ。私が引いた、徹で公平な境界線を。
「かしこまりました、藤本様。名様で承りました。ご来をお待ちしております」
曜の午。
たいがそぼる、の引き戸がカラカラと音をてていた。
入ってきたのは、なウールのコートを着た理恵と、同代の女性の連れだった。かつてのような派なブランドバッグも、見栄を張った濃い化粧もない。髪をろでつに束ね、俯きがちに歩く姿は、まるで別のようにさく見えた。
「いらっしゃいませ。ご予約の藤本様ですね。カウンターへどうぞ」
私は板のから、のお客様と寸分違わぬ穏やかな会釈を向けた。
理恵は私の顔を直できず、たださく「はい」とだけ呟いて、端の席に腰をろした。連れの女性は、内の清潔な檜のりや、磨きげられた包丁の刃先を物珍しそうに眺めている。
「理恵ちゃん、素敵なおね。本当にここ、お義姉さんのおなの?」
「うん……すごく、お魚が美しいおだから。度、連れてきたくて」
理恵の声には、かつての傲な響きは微もなかった。タダ飯をわせろと騒ぐ内ではなく、自分の財布から正当な対価を払って事をしに来た、の客の顔だった。
さんが際よく、旬の刺の盛りわせと鉢を運ぶ。