"「魚臭いから焼肉屋へ」30人を連れ去った義妹が広めた嘘" 第11話
で済むんだから。
カチャリ、と通話が繋がった。
「もしもし、理恵か? お、今どこに――」
「お兄ちゃん!! 助けて!!」
理恵は個ので、なりふり構わず叫んだ。廊に響き渡ることも構わず、便器を掴んで泣き喚いた。
「今すぐ! 今すぐ奈緒さんの座に万振り込んで! お願いだから今すぐ!!」
受話器の向こうで、健が息を呑む気配がした。
「……は? なんで俺が振り込まなきゃいけないんだよ」
「万払えば済むの! 奈緒さんに『請求は取りげた、族ので話しって解決した』って言わせれば、同窓会のみんなにも言い訳がつの! 私が横領したわけじゃない、キャンセル料をて替えてただけだって言えるのよ! くして! 私、警察に突きされちゃう!!」
「……お、公民館にいるのか」
健の声は、いつもと違っていた。いつもの、面倒くさそうに妥協点を探るような曖昧な響きが、完全に消え失せていた。
「いるよ! トイレに閉じこもってるの! たちに囲まれて、澤って女に証拠突きつけられて……! お願いお兄ちゃん、たった万でしょ!? 妹のがかかってんのよ! 族なら助けてよ!!」
受話器の向こうから、く、い吐息が漏れ聞こえた。
それは、妹の勝な絶叫に対する呆れですらなく、自分自が見過ごしてきた「膿」の正体を、ようやく直した男の底えするような声だった。
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「理恵」
健がをいた。
「俺は、円も払わない」
理恵の考が、瞬止した。
「……え?」
「円もさない。おの尻拭いは、もう絶対にしない」
「な……何言ってんの!? お兄ちゃんおかしくなったの!? 私がどうなってもいいの!?」
「がおかしかったのは、俺のほうだったんだよ」
健の声は、震えていた。だが、その輪郭は驚くほどかった。
「おが問題を起こすたび、俺が財布をいて、奈緒にをいて、全部丸く収まった気になってた。俺がそうやっておを甘やかしてきたから、おは奈緒のを棒みたいに扱っても平気な化け物になったんだ」
「化け物って……ひどい! 私はお兄ちゃんの妹だよ!?」
「だからだよ」
健は吐き捨てるように言った。
「自分で蒔いた種だ。鍵をけて、あの部へ戻れ。全員にをげて、自分ので全部返せ。……度と、俺たちのにその面を見せるな」
「お兄ちゃん!? 待って、切らないで! お兄ちゃ――」
プツリ。
無慈な子音が、狭い個に虚しく反響した。
画面を見ると、通話は完全に切断されていた。慌ててリダイヤルを押すが、「おかけになった話は波の届かない……」というアナウンスが流れる。着信拒否だった。
「嘘……嘘でしょ……?」
スマートフォンがから滑り落ち、タイルのにい音をてて転がった。
、どんなが儘を言っても、どんな理尽を奈緒に押し付けても、最には必ず方をしてくれた実の兄。
その兄が、完全に自分のを振りほどいたのだ。
逃げは、もう球のどこにも残っていなかった。
分。
軋むような音をてて、女子トイレのドアがいた。
現れた理恵の姿に、廊で待っていたさんと澤さんは、切のを交えずに線を向けた。
マスカラは涙で黒く溶け落ち、頬には乾いた涙の跡がく浮きている。あんなに誇らしげに肩に掛けていたブランドバッグは、まるでのように力なく首にぶらがっていた。
理恵は幽霊のような取りで、第会議へと戻ってきた。倒れたままのパイプ子を自分で起こし、音もてずに腰を落とす。
机を挟んで向きう私と、の幹事。
さんが、あらかじめ用されていた枚の用を理恵のに滑らせた。『〇〇同窓会幹事会・』と印字された文だった。
「決定事項を言い渡します」
さんの声が、静かな部に響く。
「第に、藤本理恵を本付で幹事代表から永久に解任します。今の同窓会に関する切の業務から排除します」
理恵はさく肩を震わせ、机を見つめたまま何も言わない。
「第に、牛吉から当に取得した差額万百円、および受領した商お事券万円分を、の正午までに同窓会の専用座へ全額返還すること」
「……はい」
消え入るような声だった。
「第に」
さんは、私の元にある請求を指差した。