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"「本当の父親です」と乾杯した夫、148万円の請求書には知らん顔" 第12話

「頼む……。頼むから、お義父さんに会わせてくれ」

に両をつき、額をフローリングに擦り付けるようにして夫が呻いた。あの傲で、で偉そうにスピーチをし、私に「おの親だろ」と言い放った男が、今、私の元で震えている。

私はキッチンカウンターに背を預けたまま、ややかにその頂部を見ろした。

「……お父さんに会って、どうするの?」

「頼み込んで……いてもらうんだよ。『で内諾は与えていた』って……『事承認のつもりだった』って、お義父さんから藤沢社に言添えしてもらえれば、俺は助かるんだ……!」

夫はすがるように顔をげた。充血した目には、涙とが滲んでいた。

「役員会で……懲戒免職の話までてるんだよ! 来週の曜までに先方との誤解を解かなければ、営業部のポストを剥奪されて、関連会社の倉庫へ遷される……! 退職だってどうなるか分からないんだ! 真由美、おの父親だろ!? 娘婿の首がぶんだぞ! 族の事だろ!!」

族の事。その言葉を聞いた瞬、私の胃の底から、乾いた笑がこみげてきた。

「族……?」

夫の言葉がピタリと止まる。

「の夜、ホテルのロビーで何て言ったか、もう忘れたの?」

「そ、それは……!」

「『おの親だろ。なんで俺が払うんだ』。そう言ったのはあなたよ」

私は歩、夫にづいた。

「自分に都のいい拍が欲しいときは『本当の父親』。

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148万円の請求が来たら『おの親』。そして自分のクビがびそうになったら、また『族の事』?……あなた、恥ずかしくないの?」

「悪かった! あのは酒も入ってたし、気がってたんだ! 謝るから! 頼むからお義父さんに話してくれ! おの言でいいんだよ!」

「お父さんに謝りたいの? それとも、自分の保のためにお父さんを利用したいだけ?」

私の真っ直ぐな問いに、夫は線を泳がせ、をパクパクとかしただけで、何も答えられなかった。

保。それ以にないのだ。この男ののには、自分のプライドと、失われゆく肩のことしかない。

「お父さんに会うかどうかは、お父さんが決めることよ。私が添えすることは切ないわ。……それでもくなら、ついてきなさい」

夜の。私たちは無言のままに乗り、再びのへと向かった。

のライトが照らす暗い夜。助席の夫は、爪を噛みながら刻みに震えていた。かつて私が、義母からの理尽な求や、親戚付きいのプレッシャーにで耐えていた、この男はこんなに私の痛みに寄り添ってくれたことが度でもあっただろうか。

度もない。いつだって『嫁の役目だろ』と切り捨て、自分だけ全な所でみの見物を決め込んでいたのだ。

の玄関をけると、両親は居のコタツに入って静かにお茶をんでいた。

テレビの音だけが、さく流れている。

父は、入ってきた夫の姿を見ても、眉つかさなかった。母はしそうにちがり、台所へがっていった。

「お、お義父さん……!」

夫は居にがるなり、靴を滑らせるようにして畳に滑り込み、々と座をした。

「この度は……私の軽率なにより、お義父さんの潔なお名に傷をつけてしまい、本当に申し訳ありませんでした!!」

額を畳に押し付け、肩を激しくさせる。必のパフォーマンスだった。普段なら、親戚の誰もが「まあまあ健太郎君、顔をげなさい」と苦笑いして許してしまうような、計算された座。

だが、父は湯呑みを置くことすらしなかった。湯気の向こうから、たい、しかし凛とした声がってきた。

「……ちなさい」

夫は顔をげず、さらに額を擦り付ける。

「お義父さん! どうか、どうか藤沢社に『話は通っていた』と……私の会社に『誤解だった』と、枚のをいていただけないでしょうか! 私には庭があります! 真由美を養っていかなければならないんです! このままでは私は……!」

「ちなさいと言っているんだ」

父の声の温度が、スッとがった。

夫がビクッと肩を震わせ、恐る恐る顔をげる。そのけない顔を、父は真っ直ぐに見据えていた。

「私はな、健太郎君」

父は膝のに両を置き、静かに言い放った。

「取引先をかすために、娘を育てたんじゃない」

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