"4000円を頼んだ私に、死んだはずの父から4000万円" 第15話
全額を第者の信託座へ移却し、医療費として領収と引き換えに支払われる形に限定します。贈与税の発する曖昧な現は、円も受け取りません」
杉浦弁護士の目が、わずかに見かれた。
「第に、将来の株式譲渡や遺産相続の権利は、すべて放棄します。条の資産争いに、私と夫を巻き込まないでください。公証役で、相続放棄に関する事の続きを取っていただきます」
「奈……! なぜそんなことを……! 私はおに、自由のない暮らしを……」
正隆がを乗りそうとし、激しく咳き込んだ。点滴の管が揺れる。だが、私は言葉を止めなかった。
「第に、私と夫の活に、今切干渉しないこと。私はスーパーのパートを辞めません。夫も町の仕事を続けます。私たちは、自分たちの稼いだおで、自分たちの活を回していきます」
部のの空気が、張り詰めた氷のように直した。
「奈……おは、私をそこまで拒絶するのか」
正隆の瞳に、絶望と涙が滲んでいた。
「私はただ……の過ちを償いたいんだ。おに、父親らしいことを何つしてやれなかった……その罪滅ぼしをさせてほしいと、それだけを願っているんだよ……!」
老の痛な叫びが、無質な部に響き渡る。
その姿を見つめながら、私は静かに首を横に振った。
「あなたは、勘違いをしています」
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私の声は、驚くほど静かで、澄んでいた。
「あなたは罪滅ぼしがしたいんじゃない。ぬに、自分の良の呵責から逃げしたいだけです。を差しして、私に『お父さん、ありがとう』と言わせることで、の自分の卑怯さをチャラにしたいだけです」
正隆が息を呑み、胸を押さえた。
「母から、全部聞きました」
私は歩も引かずに、父の瞳を射抜いた。
「母はね、あなたに捨てられた惨めな女じゃありませんでした。あの酷な親族会議の席で、自分の腕本できていく誇りを守るために、自分のであのをてったんです。母は、あなたを捨てたんですよ」
正隆の顔から、完全に血の気が引いた。
「母が、どれほどのいで私をで育ててきたか。油の匂いにまみれて、指先をあかぎれだらけにして、それでも背筋を伸ばして私をべさせてくれたか。そののみを……たった千万円の切で、買い取れるなんてわないでください」
テーブルののA4用を、正隆のへと押しす。
「過に果たせなかった扶養の責任として、母の医療費をすというなら、それは受け取ります。親としての最限の義務ですから。……けれど」
私は呼吸をえ、はっきりと告げた。
「おで、娘という肩を買い取らないでください」
正隆は言葉を失い、ただをけたまま震えていた。
数の、巨な企業を率い、何百もの部に命令をしてきた男が。いま、目のにいる、物のスーツを着た実の娘の言葉に、言の反論もできずに打ちのめされていた。
「これにしていただけないのなら、千万円は今すぐ全額組み戻します。母の治療費は、国の額療養費制度と、夫の蓄えでなんとかします」
横で、悠が無言のまま、私のをしっかりと握りしめてくれた。そのの温もりが、私の言葉に揺るぎない確信を与えていた。
い、い沈黙が流れた。壁の計の針が、回、回と刻まれる。
やがて、正隆はゆっくりと顔を覆った。骨と皮ばかりの細い指の隙から、ぼろぼろと涙がこぼれ落ち、テーブルののい用を濡らしていった。
「……私の、負けだ」
老のから漏れたのは、かすれ切った、けれどで初めての、偽りのない本音だった。
「澄にも……おにも。私は……最初から、何つ敵わなかったんだな……」
正隆は震えるで万を取り、私が差しした条件の末尾に、ゆっくりと、己の署名を刻み始めた。
その背は、財界の鎮などでは決してない。己のの過ちを、ようやく直した、ただのの老いた男の姿だった。
杉浦弁護士が、震えるで万を収めた。
会議の空調が吐きす微かな械音だけが、の奥を撫でていた。
テーブルのに置かれた通の面。条が用した豪華な親族信託の分いファイルと、私が持参したコンビニコピーの条件。